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「半月板損傷=手術」じゃない “第3の治療”再生医療でスポーツ界の常識は変わるか

再生医療について語る松田芳和院長【写真:編集部】
再生医療について語る松田芳和院長【写真:編集部】

保存療法が第1、手術が第2、その2つの間に存在する“第3の治療”

 自身も主催するスプリント指導のプロ組織「0.01 SPRINT PROJECT」を主催するアテネ五輪1600メートルリレー4位・伊藤友広氏が同社の社長・裙本理人氏と縁があり、相談すると、再生医療の分野で同社が加工を手掛ける「PFC-FD」を用いた新たな治療方法があることを知り、提案を受けた。日本ではPRP注射に対応する病院が少なく、紹介を受けたのが、埼玉・熊谷に整形外科クリニックを構える1人の医師だった。

「秋本さんの場合、内側半月板を損傷し、一部断裂していました。ただ、うちに来た段階でやれる処置としてはやっている状態。それでダメなら手術もやむを得ませんが、我々のところで取り組んでいた再生医療に代表されるバイオセラピーが効く可能性はありました。秋本さんはまだ若く、これからスポーツ界の第一線の現場で活躍しなければいけない人。少しでも良くなるのであれば、やりましょうと」

 こう語ったのが、まつだ整形外科クリニックの松田芳和院長である。話を進める上で、整理しておきたいのが、そもそも「再生医療とはいったい何なのか」ということだ。

 まず、再生医療について、松田院長は「保存的治療を“第1の治療”とすると、手術が“第2の治療”、その『1』か『2』でしたが、今、2つの間に“第三の治療”として再生医療がある」と説明。従来はリハビリなどで経過を見ながら復帰の道を探り、難しければ手術に踏み切っていた。しかし、今は手術の前段階として再生医療の道がある。その一例がPRP注射だ。

 PRPとは「Platelet-Rich Plasma」の略で、日本語にすれば「多血小板血漿」。松田院長によると、血液中にある血小板には血を止める作用があり、出血したら自然とかさぶたになり、自力で治癒するのは血小板のほか、同じく血液中にある白血球がマクロファージという成分を持ち、これに自己修復作用があるためだ。PRPはこの効果を利用した治療法という。

「血液中にある組織を修復する作用を持った“良い因子”を濃縮して取り出し、患部に入れる。それがPRP、再生医療といわれています。元来持っている自己修復力を高め、加速させるものです。メリットとして合併症がほぼなく、とても安全性が高い事があげられます。

 従来行われたヒアルロン酸の注射は人によってアレルギーを発症するというリスクがありましたが、PRP注射は自分の血液を抽出し、自分の体に入れるので、アレルギーなどの副作用はまず生じないと考えていいでしょう」(松田院長)

 さらに、専門的な話になるが、PRP注射にも白血球が含まれるもの、含まれないものがあるという。白血球は前述の通り、自己修復機能を持っているが、細胞を破壊してから修復する。膝についてはこの自己修復機能がマイナスに働く可能性があるため、白血球を含まない方が望ましいというのが、松田院長の見解だ。

 実際に白血球を多く含むPRPを注射すると、注射後数日間関節の痛みを訴える方がいるという。一方、白血球を含まないPRPでは、注射後に痛みを訴える人は皆無だ。ただ、多くのPRP注射は白血球が含まれているのが現状という。

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