アスリートは睡眠をどう管理すべきか 指導者、保護者も理解すべき「眠りの知識」
子どもが良質な睡眠を取るには指導者、親が睡眠の仕組み、重要性に理解を
――育成年代に携わる保護者、指導者は子どもにどんなアプローチが考えられますか。
「アスリートが対象ではないのですが、大阪府堺市で『眠育』という取り組みをしています。睡眠リズムが崩れることが、不登校の原因のひとつだと考えられています。夜更かししてしまうから、朝起きられず学校に行けないということです。
PTAも地域もそのことを理解して、みんなでサポートして改善しようという取り組みがあって、成功してきているんです。3年連続で3割ほど不登校が減少しているのですが、この取り組みの効果も大きいのではないかと思います。そこで大事だったのが、子どもだけではなく親が睡眠について理解し、家族全員で取り組んだことで説得力を持てたことですね。
睡眠の環境を整えることも大切です。昔と違って冷暖房も省エネで安くなったので、睡眠時に適切な温度にしてあげると良いと思います。『睡眠に適した温度』と調べると、冬19度、夏26度とか出てきますが、これは光熱費を考慮したものです。年中個人が快適な温度で過ごすべきと睡眠学では言われているので、できるだけ快適な温度で眠れるような環境にしてあげてください」
――スポーツの指導者が心掛けるべきことは。
「まずはコーチ自身が睡眠について理解する。そして、子どもたちからの質問に答えられる知識を付けることです。それがコーチの役割だと思います。勉強の方法はたくさんありますから。あとは、スポーツ選手でも睡眠障害って多いんですよ。睡眠時無呼吸症候群のリスクなども当然あります。体重や首の太さとも相関があるので、よりリスクが高いスポーツもあります。
個々の睡眠リズムの問題もあるので、睡眠記録を取ってみるのもよいと思います。親やコーチが手助けしながらマネジメントしていくことが重要ですね」
――最後に、西野先生ご自身の睡眠で注意されていることは?
「高齢になればなるほど疾患リスクも高いので睡眠の重要度はさらに高いです。私は眠いときに眠るようにしています。そうすると、頑張らなきゃいけないときに踏ん張れるようになります。徹夜しなきゃいけない状況や、時差で全然眠れなかったりすることもあるのですが、眠れるときによく眠っているので、なんとかなっています。ぜひ、睡眠に関する知識をつけていただいて現場で活かしていただければと思います」
■西野精治 株式会社ブレインスリープ代表取締役
スタンフォード大学睡眠センターにて、睡眠生体リズム研究所の所長を務めながら、株式会社ブレインスリープの最高経営責任者(CEO)兼最高医療責任者(CMO)でもある。著書「スタンフォード式 最高の睡眠」はメディアでも大々的に取り上げられ、睡眠不足が指摘される多くの日本人からの反響を呼んだ。
(記事提供 TORCH)
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(今井 慧 / Kei Imai)