アスリートは睡眠をどう管理すべきか 指導者、保護者も理解すべき「眠りの知識」
アスリートはどのように睡眠をコントロールするべきか
――毎週定期的に試合がある中で、どう睡眠をコントロールすれば良いかということについて教えていただけますか?
「遠征もありますから注意することは多いですが、十分な睡眠時間を確保することが難しい現状では、とにかく眠いときには眠った方が良いということです。
眠いときというのは、『睡眠圧』(眠たいという睡眠欲求)が上がっている状態なんです。なので、寝るチャンスと捉えて良いと思います。寝過ぎるとぼーっとするなどの支障は出ますが、眠たい時を逃してしまうと眠れなくなってしまいます。睡眠が足りていない人は、眠いときに眠るという補い方もあるということを頭に入れておくと良いと思います。一回で十分な睡眠が確保できない人は分割して補うという方法もありです」
――眠いサインを逃さずに眠ることが大切なのですね。
「一番良いのは規則正しい生活によって眠気が同じ時刻にやって来ることです。体温のコントロールも同様です。実はあまり知られていないのですが、『明日は朝早いから早く寝よう』というのは間違い。入眠時間を早くしようとしても、眠ることができないことが多いはずです。
原因は特定できていませんが、 睡眠圧がそれに対抗する覚醒度を上回るタイミングが眠るチャンスなので、いつもの就寝時間の直前は覚醒度も最大になっているので、いつもより早く眠ることは難易度が高いです。そうやって考えると、時差のあるところへの遠征は身体のリズムと生活のリズムが狂うので、競技で最大のパフォーマンスを引きだすための調整が大変で、専門的な知識も必要です。
人間の場合、脳の機能は8~12歳前後まで発育し大人の脳になります。この脳の発達には発育時のレム睡眠が大きく関わっているのではないかという研究があります。育成年代にとって睡眠は人間として、アスリートとしての将来を左右しかねない、とても大切なものというわけです」
――睡眠の質を高めるために今すぐできることは何かありますか。
「体温変化に合わせて入眠する以外には、寝る前にスマホやゲームなどで頭を使わないこと。睡眠ホルモンのメラトニンは暗いところにいると生成され、光を浴びると生成が阻害されるのですが、光の影響は、タイミング、光量、時間、そして波長が関係してきます。
波長は、短い青系の波長が特に良くない。太陽光は全ての波長を含んでいるのですが、AV機器は青系の光が多い、LEDは顕著ですね。眠る前にその青系の光が網膜に届くと、夜に分泌されるべきメラトニンの合成を抑制してしまうことになるので、ブルーライト自体も確かに悪いんです。
しかし、ゲームやSNS、ネットサーフィンをすることで脳が活性化してしまうことが一番の原因だと思います。眠る前にはぼーっとして、頭を使わず、単調な作業をするなどして脳のオンオフのメリハリを付けられれば、睡眠のコントロールができると思います」