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ライバルより成長が遅い中高生へ 27歳で開花した仲川輝人の「僕が腐らなかった」理由

昨年、夢だった日本代表として初めてプレーした仲川【写真:Getty Images】
昨年、夢だった日本代表として初めてプレーした仲川【写真:Getty Images】

周りと自分を比較して生まれる焦り、宇佐美&柴崎らの存在をどう見たのか

 しかし、どれだけ自分の才能を信じていても、周りと自分を比較すれば焦ってしまうもの。例えば、同じ程度の実力と思っていたライバルがきっかけを掴み、先に活躍の舞台を得ていく。中高生世代であれば、焦りはなおさらだ。

 仲川自身も、そんな境遇を味わってきた。同じ92年生まれは「プラチナ世代」と言われ、宇佐美貴史、柴崎岳ら逸材がひしめき、特に若い年代から海外に飛び出して活躍していた。

「正直言うと、悔しかったですよね」と、本人は率直な思いを打ち明ける。

「彼らは憧れでもあったし、でも超えてなきゃいけないと思った。早くに海外に行って試合に出ている。それに負けないように努力し続けないと、この先はないし、自分の夢である日本代表もないと思った。なんで自分はそこまで行けないんだろうという葛藤もあったけど、それを発破にして、自分は彼らより何十倍も努力しないと追いつけない、練習するしかないと思っていました」

 その過程で「日本代表」という夢が揺らぐことはなかったのか。そう問うと「それはなかったです」と言い切る。「どんな時も日本代表になるために何をしなければいけないか、逆算しながら学生生活を過ごしていたし、プロになってレンタル先でもずっと考えていたことだったから」。自然と言葉に力がこもっていた。

 遠回りで花開いたサッカー人生。昨季の活躍で一躍、子供たちから憧れられる存在となったが、そんな自身の経験と思考を次世代に伝える機会があった。6月25日、登場したのは「オンラインエール授業」なるものだ。

「インハイ.tv」と全国高体連が「明日へのエールプロジェクト」の一環として展開。インターハイ中止により、目標を失った高校生をトップ選手らが激励し、「いまとこれから」を話し合おうという企画で、現役の日本代表ストライカーが“先生”になった。

 印象的だったのは、大学時代に大怪我を負った日のエピソード。プロ入りを目前に控え、さぞ傷ついたのではないかと思いきや、本人は「落ち込んだのは1日だけ。翌日だけ、家でしょぼーんとしていたかな」と笑う。その理由が、仲川らしかった。

「その翌日には、いかに早く練習ができて、サッカーができる体に戻せるかを考えていた。ずっと落ち込んでいても、何も状況は変わらない。すぐに切り替えること。試合で失敗した時も一緒。失敗することはいいことだと思うし、次の成功にどうつなげていくかを考えながら、今もやっている。怪我をした時も、怪我する前よりひと回りパワーアップすることを目標にしていました」

 落ち込んでいても、何も変わらない――。それは身長の問題も、そうだ。背が小さい選手へ向け、仲川は「自分も悩んでいたことはあるけど、悩みを捨てることで、いかに強みを伸ばすかという思考に変えていってもらいたい」と言い、さらに「このプレーなら絶対に負けないというものを今からでも見つけ出せれば、プロサッカー選手になることも可能だから」と背中を押した。

 今回のインタビューを行ったのは、その授業後のこと。今はまだ、周りに後れながらも「将来は絶対にプロになりたい」「日本代表として戦いたい」と、かつての仲川のように大志を抱いている中高生はどんな思いを持つべきか。本人に聞いた。

「自分が好きな言葉は『努力』と『向上心』。周りに負けているなら周りより努力しないと上手くならないのは当たり前のこと。専大では向上心という言葉を大切にしていた。当時は朝7時から1時間から1時間半くらいしか練習ができない環境。その中でいかに成長できるか、一日一日上手くなるために一秒たりとも無駄にしてはいけないと思って意識高く練習していたから上手くなれた。

 あとはサッカーを楽しむということは絶対に忘れてはいけない。いくら自分が上手くなりたいといっても、サッカーはチームでやるもの。一人では絶対にできない。だから、楽しくサッカーをしていないとチームの士気が下がるし、一人が欠けるとチームとして持たなくなることがある。楽しんでサッカーをやることを第一にして成長してほしい。それは学生のみんなにも伝えたい」

 他人の能力を羨んでいても、自分の境遇を憂いていても、才能は伸びない。身体的な不利、大きな怪我、どんな逆境も乗り越えてきた遅咲きの男の言葉は、それを教えてくれる。

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