被災地から日の丸へ― 元バスケ日本代表戦士が故郷で果たした“夢の出会い”
バスケットボールの元日本代表・渡邉拓馬氏が26日に福島市内の松川小で行われた「東北『夢』応援プログラム」に出演した。地元・福島出身で、Bリーグ・アルバルク東京など日本のバスケ界の第一線で活躍した名シューターは、「松川スポーツ少年団ミニバスケットボール部」の男女32人に直接指導。1年間にわたる長期指導の第1回として「夢宣言」を行い、第一歩を踏み出した。
福島出身の渡邉拓馬氏が「東北『夢』応援プログラム」で小学生を熱血指導
バスケットボールの元日本代表・渡邉拓馬氏が26日に福島市内の松川小で行われた「東北『夢』応援プログラム」に出演した。地元・福島出身で、Bリーグ・アルバルク東京など日本のバスケ界の第一線で活躍した名シューターは、「松川スポーツ少年団ミニバスケットボール部」の男女32人に直接指導。1年間にわたる長期指導の第1回として「夢宣言」を行い、第一歩を踏み出した。
底冷えの体育館が熱気に包まれた。渡邉氏は32人の小さなバスケ選手に熱血指導。床を打つボールのリズムは小気味良く、活気ある声が飛んだ。「常に試合をイメージすること。練習だけの練習にならないように。試合で使うことをいつもイメージしながらやろう!」。188センチの大きな体を見上げる子供たちの目は、一様に輝いていた。
JR福島駅から車で30分離れた自然に包まれた小学校。バスケ界のスター選手が、長閑な場所にやってきて、直接指導する。なんとも贅沢なイベントは「東北『夢』応援プログラム」によって生まれた。
公財「東日本大震災復興支援財団」が協力し、アスリートなどからスポーツ指導機会を提供。子供たちの様々な夢と目標の達成をサポートしていく。水泳、陸上、ラグビーなど多岐にわたる競技からバスケットボール編で、指導役の「夢応援マイスター」として登場したのが渡邉氏だった。
ただの一期一会で終わるわけではない。主にスマートフォンの遠隔指導ツール「スマートコーチ」を駆使し、1年間にわたって指導は継続する。実際に練習する動画を撮って送り、渡邉氏が映像を見て様々な助言を返す。拠点を置く東京との距離を超え、つながっていくシステム。今回は、1年間の指導の“出会い”だった。
「それが努力とも思わなかった」―子供たちに明かした“成長の軌跡”
会場からほど近い、蓬来町出身の渡邉氏。「すぐ近くの蓬莱東小から日本代表になったり、海外の試合に行ったりした経験を少しでも伝えたい」と思いを込め、この日は現役時代に実際に使っていた練習メニューでドリブル、オフェンスの動きなどを細かく指導した。お手本で演じたシュート練習では10本以上ノーミスで成功。元トップ選手の技術力に思わず、どよめきが漏れた。
約2時間にわたる指導を終え、設けられたのはトークコーナーだ。福島から日本代表に羽ばたいていくまでの過程を、秘話を交えて披露した。
生徒たちと同じ小学校時代を振り返り、渡邉氏は「バスケしかやってこなかった。休みの日も体育館に行ってずっと練習。でも、バスケが遊びみたいだったから」と回想。武器だった正確なシュートを生んだ要因は「高校時代、4時から7時は全体練習。その後は7~10時まで一人でシュート練習をやっていた」と明かした。
「壁にボールを当ててパスに見立てた。でも、それが努力とも思わなかった。うまくなるためにやっていただけのことだから」と成長の軌跡を語りかけた。さらに、生徒からの質問コーナーでは「尊敬するプレーヤーは誰ですか」「田臥選手の凄いところはどこですか」など、子供たちから次々と手が挙がり、交流した。
そして、イベントの締めくくりは「夢宣言」だった。
「イメージすることでスキルの伸び方は違う」―子供たちと交わした「半年後の約束」
「わたしの将来の夢」「未来のわたしの町をどうしたい?」、来年3月に予定されている次回指導に向けた「半年後の約束」の3つをシートに書き込み、子供たちが全員の前で宣言した。
「将来は学校の先生になってバスケを教えたい」「わたしの町をバスケが好きな人いっぱいの町にしたい」「半年後までにリバウンドを多く取れる選手になりたい」など、それぞれの「夢」を語ると、渡邉氏がシートにサイン。一人ひとりと記念撮影して、半年後の成長の約束を交わした。
「今日やった練習は僕がいたアルバルク東京はもちろん、NBAの選手も実際にやっていること。でも、まだまだ日本は世界とは差があります。ただ、どんな時もディフェンスがいることをイメージすることでスキルの伸び方は違ってくる。練習から常にイメージしながらやっていきましょう。応援しています。また3月に会いましょう」
力強い言葉に頷いた子供たち。イベント後は体育館で輪になって一緒に弁当を食べ、親睦も深めた。福島でつながれた子供と元バスケット日本代表選手は、どんな成長物語を描いていくのか。「夢」の1年間がティップオフした。
(THE ANSWER編集部)