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渡邉拓馬氏が会津若松での「東北『夢』応援プログラム」成果発表イベントに参加

例年よりも早く桜が開花した福島・会津若松市。淡いピンクの花びらが歴史ある城下町を彩った4月3日、一つのチームとプロジェクトに幕が下ろされた。

「東北『夢』応援プログラム」成果発表イベントが行われた【写真:編集部】
「東北『夢』応援プログラム」成果発表イベントが行われた【写真:編集部】

遊び感覚で養う瞬時の判断力 元バスケ日本代表が福島の子どもたちに授けたコツ

 例年よりも早く桜が開花した福島・会津若松市。淡いピンクの花びらが歴史ある城下町を彩った4月3日、一つのチームとプロジェクトに幕が下ろされた。

 昨秋からスタートした「東北『夢』応援プログラム」成果発表イベントに参加するため、会津若松市北会津農村環境改善センター体育館に集合したのは、市立川南小学校で活動するミニバスケットボールチーム「川南ドルフィンズ」の子どもたち。35年以上にわたり地域に根差した活動をしてきた「川南ドルフィンズ」は2020年度をもって解団されたため、この日がチームとしては最後の活動となった。

 子どもたちにとって忘れられない一日を演出したのが、夢応援マイスターを務めるバスケットボール元日本代表の渡邉拓馬氏だ。昨年以来続く新型コロナウイルス感染症の影響により閉塞感が漂う日々が続くが、約1時間半のクリニックでは子どもたちはハツラツとした動きと大きな笑顔を弾けさせた。

「東北『夢』応援プログラム」は、公益財団法人東日本大震災復興支援財団が立ち上げた、年間を通して子どもたちの夢や目標を応援するプログラムだ。「夢応援マイスター」を務めるアスリートや元アスリートが、参加する子供たちがそれぞれに掲げる半年後、あるいは1年後の目標に向かって、遠隔指導ツールでサポート。1日限りのイベントで子どもたちとの交流を終えるのではなく、離れた場所でも動画やSNSを通じて継続したプライベートレッスンが受けられるという画期的な試みだ。

 新型コロナウイルス感染症の予防対策がとられた体育館に、ボムボムというドリブルの音と、キュッキュッとシューズで床を踏みしめる音が鳴り響く。クリニックに参加する約20人がキチッと整列した午前9時半、マウスガード越しに温和な笑みを浮かべた渡邉氏が姿を現すと、子どもたちは一斉に目を輝かせた。

 今年1月には普及型コミュニケーションアバター「newme(ニューミー)」を利用した中間発表イベントが行われたが、直接対面するのは昨年10月以来、半年ぶりのこと。「短い時間ですが楽しみましょう!」と声をかけた渡邉氏がこの日、子どもたちに伝えたかったのは「考えながら動くこと」だった。

子どもたちを指導する渡邉氏【写真:編集部】
子どもたちを指導する渡邉氏【写真:編集部】

頭をフル回転させる三目並べで養う、試合で必要な瞬時の判断力

 まずは、両手にボールを持ったドリブル練習からスタート。両手でボールをコントロールするだけでも至難の業だが、それぞれの手でバウンドの高さを変えたドリブルをしたり、両手でドリブルしながら片足でケンケンしながら前進したり。渡邉氏から課された様々なタスクに頭を悩ませながらも、懸命にトライしながら、成功の糸口を見つける姿がそこにはあった。

 子どもたちが大いに盛り上がったのが、マーカーとコーンを使った三目並べゲームだ。3×3で9つ置かれたマーカーの上に、男子チーム、女子チームがリレー方式でそれぞれ色違いのコーンを並べ、先に3つ並べた方が勝利するというゲーム。コーンを持った最初の3人で決着がつかなかった場合、4人目以降はすでに置かれたコーンの位置を変えて3つ並べることを目指す。この時ポイントとなるのが、自分たちのコーンを早く3つ並べること、そして相手が3つ並べるのを阻止することだ。

 当初、味方のコーンを3つ並べることだけを意識していた子どもたちだが、次第に相手の動きを阻止することも有効だと気付き、最終的には相手の動きを阻止しながら味方に有利な位置にコーンを置くまでに“成長”。さらに、リレーのバトン代わりにドリブルしたボールを繋ぎながらも、的確に場所を見極めてコーンを動かせるようになっていった。どこにパスを出せば仲間に通りやすいのか、どの位置に切り込めばシュートが打ちやすいのか。つまりこの遊び感覚のゲームを通じて、バスケットボールの試合中に必要となる「瞬時に最良の決断を下せる能力」を楽しみながら身につけられるというわけだ。

 その他、攻守交代のタイミングで最後にボールを持っていた人以外のメンバーが毎回入れ替わるミニゲームなどを実施。最後は、参加者を3チームに分け、1分半で組み合わせを変えながら行った4対4のミニゲームでは、遠隔指導に参加した子どもたち12人の動きに渡邉氏が目を光らせた。「しっかりスタンスを取れているか」「視線をしっかり上げているか」「左右差がなくできているか」「リズム良くできているか」「試合をイメージしているか」の5項目について5段階評価をつけ、修了証と一緒に渡される評価シートに書き込んだ。

子どもたちへメッセージを送った渡邉氏【写真:編集部】
子どもたちへメッセージを送った渡邉氏【写真:編集部】

子どもたちの自己採点はほぼ3点と控え目も 渡邉氏「もっと自信を持って」

 いよいよやってきた成果発表イベントの時間。遠隔指導に参加した子どもたちは、半年前に掲げた目標がどれだけ達成できたか、その感想と自己採点を発表した。半年前「ディフェンスのスキルを上げる」と宣言した新中学1年生の岩下翔くんは「ディフェンスを諦めず、しっかりできるようになった。周りを見てドリブルできるようになった」と手応えを発表。諦めないで嫌なことに取り組む姿勢を、中学でも継続することを誓った。

 同じく新中学1年生の佐藤侑奈さんは、この半年間で「相手に激しくプレッシャーをかけながら、ディフェンスができるようになった」と振り返り、遠隔指導を通じて「渡邉さんからいろいろ教えてもらったことや送っていただいた動画を、これからも活用していきたいです」と、さらなる成長に繋げるとした。

 子どもたちの自己採点は、ほとんどが5点満点中3点と控え目だったが、渡邉氏の目に映った成長は3点を遥かに超えるものだった。

「皆さん、半年間ありがとうございました。コロナで大変な世の中ですが、できることを精一杯やるようにしていきましょう。自己採点は3点が多かったけど、みんな3点以上できていたよ。みんな初めてのこともしっかりできています。もっと自信を持って取り組んでね。下を向かずに、将来楽しいことがあると信じて、前を向いて頑張りましょう。また機会があれば、一緒にバスケをやりましょう!」

 最後は参加者全員で記念撮影。会津若松での「東北『夢』応援プログラム」は終了し、「川南ドルフィンズ」の活動にもピリオドが打たれたが、この半年間で渡邉氏と子どもたちの間に生まれた絆が消えることはない。東北・福島の地で始まった縁は、これからも渡邉氏と子どもたちを繋いでいく。

(THE ANSWER編集部・佐藤 直子 / Naoko Sato)

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