慶大の難関・総合型入試合格 在学中に金メダル「勉強は嫌いじゃない」3学年上の内容を兄妹で競った文武両道の礎――フェンシング・飯村一輝

文武両道のメリット「スポーツだけにオールインしない生活が相乗効果」
現在は3年生。大学生活について聞くと、“塾生・飯村”は「オリンピックのしわ寄せで、今は忙しくて……」と苦笑いする。
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3年前期にあるパリ五輪を軸に単位取得を計画していた。卒業必修124のうち、1年次でフル単の「40」を取得。2年次は五輪レースもあり「30」に控え、五輪本番の3年前期は「2」のみにセーブ。現在の後期を含め、残り52単位をあと3学期で「20」「20」「12」で取る必要がある。
「通学は月曜と金曜に寄せ、月曜は1、2、4、5限、金曜は1、2、3、4限。あとはオンデマンドで履修できる授業を取って、泣きそうなくらいしんどいです(笑)。通学は往復4時間。毎日小旅行の感覚で半日が潰れ、練習は週3日だけ。今期からゼミが始まり、卒論もあるので4年秋はもっと地獄ですね……」
悲鳴を上げて普通の大学生を装うが、充実感は隠せない。「多様性」や「デュアルキャリア」というフレーズがスタンダードの時代。スポーツにすべての犠牲を払うばかりではなく、文武両道の追求もひとつの価値観として台頭した。当事者として、そのメリットを感じる。
「僕自身の意見ですが、『スポーツ、スポーツ』と(のめり込んで)やっていると、うまくいかないこともあると思うんです。2つが両立して、スポーツだけにオールインしない生活が良いバランスで、互いに相乗効果を生む。僕自身、そういう経験をしてきました。そういう環境に置けたのは母のおかげ。物心つく前から英会話に通っていたので。幼少期から、そういう道に導きたかったんだろうなと。ただ、英会話は『行きたくない!』と泣いて嫌がりましたけどね」

今後、競技生活で思い描くのは、2025年に世界ランク1位奪取、2026年のアジア大会で個人&団体で金メダル獲得。そして、24歳で迎える2028年ロス五輪で、パリでは個人4位に終わった雪辱のメダル獲得と団体2連覇。しかし、20歳にして世界一の頂に辿り着いた今、一人の人間として残りの人生に何を思い描くのか。
それが気になって、最後に「今後の人生のビジョンは何かありますか」と聞くと、間髪入れずに「あります」と即答。続けて「フェンシングというマイナー競技で、こんなことができるんだという新しい価値観のシンボルとして生きたいですね」と言った。
「こんな社会貢献ができるんだ、こんな働き方があるんだと示して、飯村一輝みたいな人生を歩みたいと思ってもらえるように。例えば、文武両道でスポーツだけじゃなくて勉強も頑張りたいと思うきっかけを提供する人になりたい。もちろん、スポーツの魅力を発信し続け、感動も共有したい。それがウェルビーイングの世界に繋がるので。加えて、『憧れられる』のもう1個上のステップへ、まだぼんやりとしたイメージですけど、そういうシンボルになれたらうれしいですね」
令和まで脈々と受け継がれた「若き血」をたぎらせる金メダルフェンサー・飯村一輝。彼に限っては「ペンも剣も強し」である。
■飯村 一輝 / Kazuki Iimura
2003年12月27日生まれ。京都市出身。太田雄貴のコーチだった父・栄彦さんの影響で京都女子大附属小1からフェンシングを始める。龍谷大平安中・高(京都)を経て、慶大総合政策学部に総合型選抜入試で進学。高校1年生だった15歳で男子フルーレの日本代表入り。2022年世界ジュニア選手権優勝、ワールドカップ(W杯)3位入賞。2023年世界選手権で史上初の男子フルーレ団体金メダル獲得に貢献した。2024年パリ五輪はフルーレ個人4位、団体金メダル。妹の彩乃も女子フルーレ日本代表。
(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)