U-21ドイツ代表“10番”が認める日本人トレーナー 渡独3年、人生を変えた偶然の出会い
日本人街で偶然の出会い、ナイジェリア代表選手の施術を開始
ドイツに来て半年が経った2019年の年末。窪川はドイツ中西部の街、デュッセルドルフにいた。
ヨーロッパ屈指の日本人街があるデュッセルドルフには、500もの日本企業が拠点を構え、駐在員やその家族を中心に5000人もの日本人が住む。ドイツ在住者はもちろん、ベルギーやオランダなど隣国に住む日本人も訪れる場所だ。日本人街のメイン通りから一つ離れた路地にいた窪川は、あるドイツ人に声をかけられた。
「僕がジャージを着ていたからか、そのドイツ人は『日本のサッカー選手か?』と聞いてきたんです。トレーナーとして活動していると答えると、ある選手を施術してくれないかと言われました」
話しかけてきたドイツ人は選手の代理人の仕事をする傍ら、トレーナーを探していた。紹介された選手は、現ナイジェリア代表で当時フォルトゥナ・デュッセルドルフに所属していたGKマドゥカ・オコイェ。この出会いをきっかけに、窪川はフォルトゥナ・デュッセルドルフの数選手を診るようになる。
「海外の選手は日本の選手と骨格や筋肉のつき方が全く違います。最初は戸惑いましたが、それぞれの選手に適した強度で施術することの大切さを再確認しましたね」
日本人ならではの、きめ細やかなアプローチは評判を呼んだ。そして昨シーズン、「自分のケアをしてもらえないか」とやって来たのは、日本にルーツを持つ22歳のアペルカンプ真大だ。
日本生まれのアペルカンプは15歳の時に父の転勤によりドイツで暮らし始め、フォルトゥナ・デュッセルドルフの下部組織で実績を積み、2020年9月にトップデビューを果たした。昨シーズンは怪我に悩まされたが、窪川の施術後に4試合連続ゴールという結果を残し、今シーズンからは窪川と専属トレーナーの契約を交わした。U-21ドイツ代表の10番としても活躍しているアペルカンプは、ドイツのA代表では出場していないため、今後日本代表のユニフォームを着てピッチに立つ可能性もある注目の選手だ。