エースの移籍に思う子供の「進路選択」 選手を成長させる“最適な環境”とは
思わぬ知らせに、ソファーに座っていた僕は立ち上がって驚いた。ユリアンとは、僕が指導するU-15チームのエースで、絶対の信頼を寄せていた選手だったからだ。今季のキャプテン候補でもあり、そんな素振りを全く見せていなかったので、最初は何かの間違いだと思ったほどだ。
【連載コラム】ドイツ在住日本人コーチの「サッカーと子育て論」――キャプテン候補の思わぬ移籍
夏休みに入って1週間後、突然クラブのユース責任者から連絡があった。
「ユリアンが移籍することになった」
思わぬ知らせに、ソファーに座っていた僕は立ち上がって驚いた。ユリアンとは、僕が指導するU-15チームのエースで、絶対の信頼を寄せていた選手だったからだ。今季のキャプテン候補でもあり、そんな素振りを全く見せていなかったので、最初は何かの間違いだと思ったほどだ。
本人に連絡を取ってみると、SVバイルというU-15・2部リーグに所属する強豪クラブの練習に参加し、受け入れが認められたと明かしてくれた。
「連絡が遅くなってごめんなさい。でも、いろんなことが一気に動き出して、すぐに決断しなきゃいけない状況になっていたんだ。キチ(著者の愛称)のトレーニングはいつも楽しかった。でも、ここでは僕のやりたいサッカーはできないと思ったんだ。だから、挑戦したい」
ユリアンはU-13の頃にはスイスリーグ1部の名門クラブ、FCバーゼルのサポートトレーニングにも招待されていたほどの選手。でも性格的にとても奥手で、自己主張する周りの選手と上手く合わずに、自分のプレーを披露しきれないことも多かった。たぶん、ずっと悩んでいたのだ。