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エースの移籍に思う子供の「進路選択」 選手を成長させる“最適な環境”とは

思わぬ知らせに、ソファーに座っていた僕は立ち上がって驚いた。ユリアンとは、僕が指導するU-15チームのエースで、絶対の信頼を寄せていた選手だったからだ。今季のキャプテン候補でもあり、そんな素振りを全く見せていなかったので、最初は何かの間違いだと思ったほどだ。

【連載コラム】ドイツ在住日本人コーチの「サッカーと子育て論」――キャプテン候補の思わぬ移籍

 夏休みに入って1週間後、突然クラブのユース責任者から連絡があった。

「ユリアンが移籍することになった」

 思わぬ知らせに、ソファーに座っていた僕は立ち上がって驚いた。ユリアンとは、僕が指導するU-15チームのエースで、絶対の信頼を寄せていた選手だったからだ。今季のキャプテン候補でもあり、そんな素振りを全く見せていなかったので、最初は何かの間違いだと思ったほどだ。

 本人に連絡を取ってみると、SVバイルというU-15・2部リーグに所属する強豪クラブの練習に参加し、受け入れが認められたと明かしてくれた。

「連絡が遅くなってごめんなさい。でも、いろんなことが一気に動き出して、すぐに決断しなきゃいけない状況になっていたんだ。キチ(著者の愛称)のトレーニングはいつも楽しかった。でも、ここでは僕のやりたいサッカーはできないと思ったんだ。だから、挑戦したい」

 ユリアンはU-13の頃にはスイスリーグ1部の名門クラブ、FCバーゼルのサポートトレーニングにも招待されていたほどの選手。でも性格的にとても奥手で、自己主張する周りの選手と上手く合わずに、自分のプレーを披露しきれないことも多かった。たぶん、ずっと悩んでいたのだ。

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中野 吉之伴

1977年生まれ。ドイツサッカー連盟公認A級ライセンスを保持する現役育成指導者。ドイツでの指導歴は20年以上。SCフライブルクU-15チームで研鑽を積み、現在は元ブンデスリーガクラブであるフライブルガーFCのU12監督と地元町クラブのSVホッホドルフU19監督を兼任する。執筆では現場での経験を生かした論理的分析が得意で、特に育成・グラスルーツサッカーのスペシャリスト。著書に『サッカー年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)、『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)がある。WEBマガジン「フッスバルラボ」主筆・運営。

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