「戦力外通告は“終わり”じゃない」 通告から7年間プレーを続けた元Jリーガーの挑戦
「戦力外」は終わりじゃない 納得し、次のステージに向かえる仕組みをつくりたい
――最後に、今後の展望を教えてください。
「実は今の活動は、この先に描いている大きな夢のためにあるんです。
その夢とは、戦力外通告を受けた選手たちが練習できる環境を作ること。自分のように、まだやれると思っていても、怪我やさまざまな理由からプレーできるチームがなくなってしまう選手に、もう一度プレーできる場所を作りたいと思っています。
今、プロサッカー選手だけでも1年間に百数十人の選手が戦力外通告を受けています。トライアウトの機会はあるのですが、見つけてもらえる選手はほんのひと握り。故障を抱える選手は最初からほとんど見てもらえません。
でも、私が日本で戦力外通告を受けた後の7年間を東南アジアでプレーできたように、世界中探せばプレーできる場所はまだまだある。日本より良い条件でプレーできる国だってあるんです。それを知ってほしいし、選手たちが再チャレンジできる可能性を広げたい。チャレンジしたうえで、納得できる『続け方』『やめ方』をしてもらいたいなと思うのです。
また、せっかくプロになっても、まだ体力も可能性もある若いうちに1年で戦力外になってしまうこともある世界。それほどリスクが高いとサッカー選手を目指す人が減り、若い選手が育ちにくくなってしまいます。ヨーロッパには16、17歳でトップチームで活躍する選手もいるので、そこに世界との差を感じますね。
海外では、戦力外通告を受けたら年俸の半分ほどが支給される失業手当があったり、その後も練習を続けられる場所があったりする国もあります。日本にも、そういった仕組みや場所を整えていきたいと思っています。今は場所を探しているところで、賛同してくれる人を増やしながら、できることから始めていきたいですね。
エージェントの仕事も、ONE TAP SPORTSの営業の仕事も、選手や指導者の経験があるからこそ、ここにたどり着いている。戦力外通告を受けても終わりじゃない。サッカーを続けるにしても、やめるにしても、一人でも多くの選手が納得してその次の道に進めるようにサポートしていきたいです」
■金古 聖司 / 株式会社アストニック・選手サポート、株式会社ユーフォリア・セールス
1980年生まれ、福岡県出身。元U-21サッカー日本代表。東福岡高校で全国高校サッカー選手権大会、インターハイ、高円宮杯全日本ユース(U-18)サッカー選手権大会を制し、高校3冠を達成。卒業後は鹿島アントラーズに加入。2005年にヴィッセル神戸に移籍し、アビスパ福岡、名古屋グランパスでプレー。2009年からは、シンガポール、インドネシア、タイ、ミャンマーと海外で活躍。2016年から本庄第一高校の事務職員・サッカー部監督として活動。その後、サッカー選手のエージェント事業を行う株式会社アストニックで選手サポートを担う。並行して株式会社ユーフォリアではONE TAP SPORTSのセールスに従事する。
(記事提供 TORCH)
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(ドットライフ・粟村 千愛 / Chisato Awamura)