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無償のコーチが存在も… 北米の教員にとっても運動部の指導はブラック労働なのか

やや事情が違うカナダ、無償のボランティアでコーチを引き受ける例も

 日本と違うのは、課外活動の指導は教員に義務付けられた仕事かどうかがはっきりしている点だろう。労使協定で課外活動は教員の仕事ではないと定められている場合は、やりたくなければ引き受けなければよいし、指導した場合には最低時給を下回らない程度の報酬が出る。(ただし、学校区と教員間との合意で、体育科教員には、何らかの運動部の指導も、業務範囲に含めるとしているところもあると伝え聞いたことがある)

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 これは教員だけの話ではない。米国の求人募集には、どのような仕事でも、求められる労働の詳細がびっしり書かれている。どのような能力が必要か、どのくらいの重さのものを持ち運ぶか、などだ。あとになって、雇用契約に含まれる仕事か否かで、雇用する側とされる側がトラブルを起こさないようにするためだろう。そういったこともあって「誰にでもできる簡単なお仕事です」というような従業員募集のチラシは、あまり見かけたことがない。

 同じ北米でもカナダはやや事情が違う。カナダの公立校の教員の労働条件を示した資料をいくつか調べた限りでは、課外活動の指導は教員のボランティアによってなされている。私はカナダのレスブリッジという街を訪れた時に、公立中学校の野球部の顧問に取材をする機会があった。野球部の顧問は教員であり、無償のボランティアでコーチを引き受けているということだった。

 カナダの公立校の運動部もシーズン制であり、運動部の顧問をする日本の教員と比べると、指導に費やす時間は明らかに少ない。それでもシーズン中は忙しく野球部の指導をするために、家に仕事を持ち帰ることもあるという。

 ただし、無償のボランティアでコーチをすることは、ブラック労働とは捉えられていないようだった。この野球部の顧問によると、それぞれの得意分野で何らかのボランティアで学校に貢献するようことが推奨されているが、校長らの管理職から、半ば強制的に課外活動の指導を押し付けられることはないという。ボランティアで運動部の指導を引き受ける教員がいない場合には、近隣の大学に募集をかけ、教員養成課程の学生らに指導をしてもらう手はずになっている。

 米国でも、カナダでも、授業を終えて、運動部の指導もする教員は、当たり前だが忙しい。それでも、米国の場合は、課外活動の指導は義務付けられた仕事内容かどうかをはっきりさせることで、ブラック化を防いでおり、教員のボランティアで成り立つカナダの課外活動は、「ボラ ンティア」の定義通り、課外活動の指導を強要されないことで、ブラック化を防いでいるようではある。

(谷口 輝世子 / Kiyoko Taniguchi)

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谷口 輝世子

デイリースポーツ紙で日本のプロ野球を担当。98年から米国に拠点を移しメジャーリーグを担当。2001年からフリーランスのスポーツライターに。現地に住んでいるからこそ見えてくる米国のプロスポーツ、学生スポーツ、子どものスポーツ事情を深く取材。近著に『なぜ、子どものスポーツを見ていると力が入るのか――米国発スポーツ・ペアレンティングのすすめ』(生活書院)ほか、『帝国化するメジャーリーグ』(明石書店)『子どもがひとりで遊べない国、アメリカ』(生活書院)。分担執筆『21世紀スポーツ大事典』(大修館書店)分担執筆『運動部活動の理論と実践』(大修館書店)。

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