NBA選手を目指す子供たちへ 元バスケ日本代表・渡邉拓馬氏「楽しく、考えながら」
バスケットボールの元日本代表・渡邉拓馬氏が9月30日、福島県福島市の荒井小学校体育館で行われた「東北『夢』応援プログラム」の夢宣言イベントに参加。生まれ育った地元の“後輩”たちにバスケットボールの楽しさと目標を持って夢に向かうことの大切さを教えた。Bリーグのアルバルク東京や日本代表で活躍し、現在は3人制バスケ「3×3」をプレーする渡邉氏は、人見知りしない「荒井ミニバスケットボールスポーツ少年団」の子供たちとすぐに打ち解け、歓声と笑顔の絶えない2時間となった。
故郷・福島の小学生15人を直接指導、歓声と笑顔の絶えない2時間に
バスケットボールの元日本代表・渡邉拓馬氏が9月30日、福島県福島市の荒井小学校体育館で行われた「東北『夢』応援プログラム」の夢宣言イベントに参加。生まれ育った地元の“後輩”たちにバスケットボールの楽しさと目標を持って夢に向かうことの大切さを教えた。Bリーグのアルバルク東京や日本代表で活躍し、現在は3人制バスケ「3×3」をプレーする渡邉氏は、人見知りしない「荒井ミニバスケットボールスポーツ少年団」の子供たちとすぐに打ち解け、歓声と笑顔の絶えない2時間となった。
【注目】育成とその先の未来へ 野球少年・少女、保護者や指導者が知りたい現場の今を発信、野球育成解決サイト「First Pitch」はこちら
渡邉氏が生まれ育ったのは、福島県福島市。この日、クリニックに参加した小学2年生から6年生までの15人にとっては、憧れの大先輩にあたる。渡邉氏が体育館に姿を見せると、すでに集合していた子供たちは待ちきれない様子で駆け寄り、大きな声で「よろしくお願いします!」と元気に挨拶。「今日は上手くなるために必要なこと、そして考えることの大切さを皆さんに伝えたいと思います」という渡邉氏の言葉を、目を輝かせながら聞き入った。
子供たちは、まず3分間の鬼ごっこでウォームアップ。さらに、2人一組となり、置かれた2つのコーンの周りを追いかけっこしたり、3つのコーンの周りを追いかけっこしたり。基本的なパスの練習では「バスケでは指の使い方が大事。手のひらは使わずに指の腹でボールを操ること。そして、重心は低く頭の位置を変えないようにパスをしてみましょう」というアドバイスに従いながら、子供たちはクリニックに没頭していった。中でも、目からうろこが落ちた様子だったのは「ボールを片手で操れるようにしよう」というアドバイスを受けた時だ。
「体の正面ではなく左右にずれたパスが来た時、ボールを両手で取りにいくよりも片手でキャッチ出来た方が、手の届く範囲が広がります。左に飛んできたボールを両手で掴むより、左手だけでキャッチ、パスができれば、これだけ遠くまで手が届くんだよ」
そう言いながら、渡邉氏が両手でボールを取りにいった時と、片手で取った時の届く範囲の違いを、実際に体で示してみると、子供たちは「おぉ、違う」「すごい」と感激の様子だった。
股抜きバウンドパスでは、見学する保護者も巻き込む大爆笑
この日は見学する保護者も多く見られる中、子供も大人も一体になって大きな笑い声に包まれたのが「股抜きパス」の練習をした時だった。2人一組でバウンドパスを行うのだが、パスは2人の中間に位置する人の股下を通さなければならない。デモンストレーションをした渡邉氏は、事もなげに低めのバウンドパスで両脚の間をくぐらせてみたが、いざ子供たちがやる番となると、なかなか上手くいかない。中間に立つ人のお尻にボールが当たって大爆笑、見事パスが通ると大歓声という具合に、会場が大いに盛り上がった。
普段から「子供たちに必要なのは、厳しい指導ではなく、楽しむことと考えること」と訴えている渡邉氏。きつい練習や怒られながらの練習ではなく、より実戦に即したドリルや練習を楽しく行いながら、「この動きは試合中にどう生きるのか」「どうしてミスをしたのか」など子供たちが自発的に考える習慣を身に付ける方が大事だと説いている。そして、バスケットボールの場合、プレーをしながら相手が取りやすいパスをどう投げたらいいか、逆に味方がパスを投げやすくするために自分はどこに走ったらいいのかなど考える中で、社会性やコミュニケーション能力を身に付けてほしいとも考えている。
この日は2時間という短い時間ではあったが、2つのゴールが90度の位置にある変則ミニゲームなどを行う中で、子供たちはそれまでと違った気付きを得たようだった。
東北「夢」応援プログラムは、公益財団法人東日本大震災復興支援財団が立ち上げた、年間を通して子供たちの夢や目標を応援するプログラムだ。「夢応援マイスター」を務めるアスリートや元アスリートが、参加する子供たちがそれぞれに掲げる半年後、あるいは1年後の目標に向かって、遠隔指導ツール「スマートコーチ」でサポート。1日限りのイベントで子供たちとの交流を終えるのではなく、離れた場所でも動画やSNSを通じて継続したプライベートレッスンが受けられるという画期的な試みだ。
渡邉氏の意外な告白に子供たちが驚き「みんなくらいの頃は、実はバスケがあまり…」
楽しい時間はあっという間に過ぎ、クリニックの最後には遠隔指導に参加する14人の子供たちが夢達成ノートに「わたしの将来の夢」「未来のわたしの町をどうしたい?」「半年後の約束」を記入。渡邉氏の前で元気に発表した「将来の夢」は14人のうち6人が「NBAプレーヤー」で「プロバスケット選手」「日本代表選手」も合わせると、実に9人が将来はバスケットボール選手として活躍する自分の姿を思い描いていた。
最後に行われた質問コーナーでは「小学生の時はバスケットボールをしていましたか?」という質問が飛んだ。すると、渡邉氏は「小学2年生からバスケをしていました。両親がバスケを教えていたんですが、みんなくらいの頃は、実はバスケがあまり好きじゃありませんでした」という衝撃の告白。「え~っ!」と驚く子供たちに、渡邉氏は「でも、辞めずに続けていたら、中学生くらいからいいプレーができるようになって楽しくなってきた。今ではもう30年くらいプレーしてます」と笑わせた。さらに「バスケットボール以外のスポーツは経験がありますか?」という質問には、「実は何もできません」と苦笑い。「走るのは遅いし、ジャンプ力もそこまでないし。でも、どうしたら上手くディフェンスができるのか、どうしたら抜けるようになるのか、考えることでスキルアップができました」と自身を例に、考えることの大切さを伝えた。
「荒井ミニバスケットボールスポーツ少年団」の子供たちとは半年間という短い交流になるが、「この半年間でどんな成長が見られるか楽しみです」と渡邉氏。「夢」応援プログラムと通じた新たな交流が、またここに始まった。
(THE ANSWER編集部)