ベテランと若手が築く理想の関係 荒木絵里香と黒後愛に見る日本女子バレーの形
緊張しない黒後を優しく見守る荒木「すごくワクワクさせてくれる選手」
荒木はこれまで北京、ロンドン、リオと3度オリンピックに出場。2012年のロンドン五輪では、キャプテンとして銅メダル獲得に大きく貢献した。その後、出産でバレーボールから1年ほど離れた経験が、日本代表としてプレーする価値を再認識させたという。
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「出産で競技から離れて違った生活を送ったり、家族や子供を持ったことで、自分の視野や感じ方が変わりましたね。それまでは、プレーできていること、代表の場にいられることが、ちょっと当たり前になっている部分もあったんですけど、今は本当に貴重でかけがえのない時間を送らせてもらっていると感じています。今、こうやって戦える場にいられる自分は幸せだなと思いますし、以前よりすごく楽しく充実しています」
黒後は高校進学後に、東京五輪に向けた日本バレーボール協会の強化プロジェクト「Team CORE」のメンバーに選ばれ、エリート教育を受けた選手でもある。日本代表としての国際大会デビューは2018年のネーションズリーグだったが、それまでもユース代表として国際経験を積んだ。「いろいろなことを経験させてもらって、少しずつトップチームでの日の丸が近づく中で、オリンピックには本当に出たいと思いましたし、そこでプレーして活躍したいと強く思いました」と話す21歳は、今や日本代表を率いるエースアタッカーに成長。「攻撃面では強気でありたい、強い気持ちは持っていたいな、と思います」と頼もしい。
さらに黒後は「去年初めて出た国際試合は全く緊張しなくて(笑)」と笑い飛ばす強心臓も持っている。大舞台でも「緊張して体がこわばるとか、そういうことはないですね」と、さも当然といった様子でサラリと言ってのける黒後の姿に、「私はめちゃ緊張しました」と言う荒木は大笑いしながらも「逞しいですよね」と柔らかな眼差しを向ける。
「プレーではすごくワクワクさせてくれる選手だなって思います。すごく。当たり出したら止まらないし、何をしてくれるのか楽しみですね。いろいろな面でワクワクドキドキさせてくれます。本当に面白いです(笑)」
経験に裏打ちされた懐の深さをもって、黒後の個性を温かく見守る荒木。今でこそ同じコートに立つ2人だが、黒後にとって荒木は憧れの人でもある。思い出に残る国際大会について聞くと、黒後はこう答えた。
「私はやっぱりロンドン(五輪)ですね。ロンドンとその2年前の世界選手権でメダルを獲った時です。テレビ番組とかめちゃめちゃ見てました。絵里香さんも見てましたし、(木村)沙織さんも見てましたし。まさか一緒にプレーできるとは思っていなかったです」