「Jのない県」からJを目指して― ある地方クラブの奮闘記「ホームゲームの1日」
「2375」に表れる、Jのない地方都市に根付いたサッカー文化
「90」
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2時間半程で各セクションの設営を終えると、スタッフやボランティアは、それぞれの持ち場についていく。13時のスタジアム入場に先立って、12時(試合開始3時間前)にN.FES(奈良クラブにおけるイベント・グルメエリア)の会場がオープンとなる。毎節、お笑い芸人によるステージや働く車展示、スタンプラリーなど毎節趣向をこらしたイベントを展開しており、担当スタッフはその統括に忙しなく動いている。一方、スポーツ観戦には欠かせないスタジアムグルメステージでは、クラブ直営のキッチンカーにてカレーを煮込んでいるスタッフもいる。一日に消費されるカレーの量は「90」食程度。ほかにもハンバーガーやからあげ、ビールなど6~10店舗程度が毎回出店しており、小規模なフードイベントにも匹敵する量のグルメが、試合会場で消費されていることになる。
「2375」
14時(試合開始1時間前)を超える頃から、多数のサポーターが四方八方からスタジアムにやってくる。場外の駐車場では空き駐車場への誘導などの対応に追われ、グッズ売り場には列ができるなど、スタジアム各所がにわかに熱気を帯びてくる。入場口では、チケットをもぎり、試合の詳細が書かれたマッチデープログラムを手渡す。今季ここまでの最多の観客数は「2375」人(その節のリーグ最多動員)。数万人を集めるJ1やNPBには及ばないものの、Jリーグのない地方都市にも確かにサッカー文化が根付いているのを感じる。
「300」
キックオフ15分前を過ぎると、スタッフの多忙はピークを迎える。場内では分刻みでイベントが行われ、場外ではグルメやグッズを片手にイベントエリアから座席へと移動する人垣を誘導し、事故のないように入場させていく。各所の対応に追われる場外担当スタッフが気づかないうちに試合開始を迎えることは日常茶飯事である。無事にキックオフを迎えると、すぐさま撤収作業に移る。スコアや試合内容を横目で気にしながら、試合開始と同時に、イベントブースや場外看板等を撤収していく。試合終了後は、試合結果に一喜一憂する間もないまま、ファン・サポーターに次回来場を呼びかけたり、スタジアムで出たゴミの処理などを行う。ちなみに1試合で出るゴミの量は「300」キロ。この量を減らし、エコなスタジアムにしていく事もまたクラブに与えられた使命である。日が暮れる頃に撤収を終え、事務所への帰路につく。こうして長い長いホームゲームの1日は終わっていく。
「5」
試合が終わるたびに、ボランティアスタッフからのフィードバック、来場者からのアンケートなどを経て、運営のブラッシュアップを行っていく。どれだけスタジアム外での取り組みが増えても、試合日のスタジアムがクラブにとって一番の「ハレ」の舞台であることは間違いない。選手やコーチングスタッフは勝利を目指して、フロントやボランティアスタッフは、来場者の笑顔が溢れる安全で楽しいスタジアム作りを目指して、それぞれの持ち場で戦っている。奈良クラブの今季ホームゲームは残り「5」試合。ぜひ一度スタジアムへ足を運んでもらえればありがたい。
(奈良クラブ・山川 達也 / Tatsuya Yamakawa)