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「Jのない県」からJを目指して― ある地方クラブの奮闘記「サッカークラブのお仕事」

ゴミの分別啓蒙活動を行っている【写真提供:奈良クラブ】
ゴミの分別啓蒙活動を行っている【写真提供:奈良クラブ】

六刀流、七刀流をこなす現状…地方クラブを表すリアルな側面

 サッカークラブには、こうした膨大な種類の業務があることはご理解いただけたと思う。ビッグクラブではこういった業務の数々は大別され、部署毎に割り振られ、専門領域化されていくが、両手で数えられる程度のフロントスタッフしかいないスモールクラブではそうはいかない。各自がそれぞれの分野を掛け持ちし、かつて記者時代に取材した大谷翔平選手も真っ青の六刀流、七刀流をこなしているという現状は、奈良クラブに関わらず、地方クラブのリアルな側面を表しているといえるだろう。

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 もちろん大変だが、メリットもある。ビジネス分野では、よくイノベーション(技術革新・新機軸)を生むのは、異なる分野のかけ合わせだと言われる。1人1人が様々な分野の業務領域を持つことは、言い換えれば個人の中に、イノベーションが生まれやすい土壌が生まれているということだ。リソースの限られる地方クラブは、何億もかけてスター選手を獲得したり、スタジアムに巨額な投資をしてグレードアップさせることはできない。だからこそ「質のいいアイデア」こそが、一番の武器になりうるし、クラブがステップアップするために重要なものの一つなのだといえる。とはいえ、各分野のスペシャリスト育成もまた重要なことであり、こういった「業務と人材」の問題は地方クラブに共通する悩みでもある。

 ここまで書いてきた通り、クラブの仕事は種々雑多なものではあるが、すべての業務に共通していることがある。それはスタジアムにたくさんお客さんが入れば、少々の仕事の疲れなんて吹き飛ぶし、その上チームが勝ちでもすれば、次の仕事への活力がどんどん湧いてくるということだ。 この感覚は前職の仕事では経験したことのない感覚であり、私自身がスポーツビジネスに転職するにあたって一番魅力と感じた部分でもある。プロサッカークラブに関わる人々は、会社としてのクラブの業績と、サッカーチームとしての成績、双方の結果に一喜一憂しながら、今日も目の前の業務に邁進しているのだ。

(奈良クラブ・山川 達也 / Tatsuya Yamakawa)

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