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児童ら21人犠牲の街からメジャーへ 人口1.5万人、ユバルディに根付く「古き良き育成方法」

父として感じる育成環境の変化「それはアメリカの新しい傾向だ」

 レイリーが子どもだった90年代末からゼロ年代と、2026年現在では、アメリカの子どものスポーツ事情変わってきている。最近は、親が子どもにお金をかけないと高いレベルでスポーツできない傾向が強まっているし、大学でプレーするための競争も激しい。このような育成環境の違いは、時代の変化だけでなく、経済的余裕のある世帯が多く住む都市の郊外と大都市から離れた小さな田舎町という違いもあるだろう。彼自身も4人の子を持つ父親として、レイリーはその変化を肌で感じている。

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「それはアメリカの新しい傾向だと思うね。僕には子どもが4人いて、彼らのスポーツ環境がいかに競争的であるかは見ているんだ。8歳の娘はサッカーをやっている。運動能力は高いのだけれど、チームで一番うまい選手というわけではない。家でも少しやっているけど、8歳でサッカーが仕事みたいに感じたら一生続けられないと思う。僕にとって野球は義務付けられたものではないし、今でもユニフォームを着る瞬間が好きなんだ。多くの選手が燃え尽きてしまう。僕は韓国でもプレーしたし、(KBO時代に)日本でキャンプをやったことがある。朝・昼・夜の練習は成長につながることもあるけれど、精神的に打ちのめされることもある」。レイリーはアメリカだけの話をしているのではない。日本でキャンプをした経験があり、韓国プロ野球でも5年間プレーした。複数の国での経験をもとに、仕事のように、長い時間、野球にだけエネルギーを注ぐことの負の側面を語っているのだ。

 テキサス州サンアントニオから130キロ離れたユバルディには、少年期からのエリート養成コースではなく、古き良きアメリカの育成スタイルがあった。レイリーの少年時代と20年後のユバルディの少年野球は全く同じではないだろう。けれども、彼のひとつひとつの話を組み合わせていくと、小学校の校舎で21人もの命が瞬時に奪われた銃撃事件のあと、リトルリーグのオールスター戦を例年通りに開催することが、地域の癒しになるという意見が出たのも理解できる。

 最後に野球はユバルディというコミュニティを再びひとつにし、傷をいやすことに貢献したと思うかと聞いた。

「確かに、野球はどんな地域でも人々を結びつけるものだと思うが、特にあの僕らの地域ではそうだったと思うんだ」

(谷口 輝世子 / Kiyoko Taniguchi)

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谷口 輝世子

デイリースポーツ紙で日本のプロ野球を担当。98年から米国に拠点を移しメジャーリーグを担当。2001年からフリーランスのスポーツライターに。現地に住んでいるからこそ見えてくる米国のプロスポーツ、学生スポーツ、子どものスポーツ事情を深く取材。近著に『なぜ、子どものスポーツを見ていると力が入るのか――米国発スポーツ・ペアレンティングのすすめ』(生活書院)ほか、『帝国化するメジャーリーグ』(明石書店)『子どもがひとりで遊べない国、アメリカ』(生活書院)。分担執筆『21世紀スポーツ大事典』(大修館書店)分担執筆『運動部活動の理論と実践』(大修館書店)。

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