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児童ら21人犠牲の街からメジャーへ 人口1.5万人、ユバルディに根付く「古き良き育成方法」

「THE ANSWER」がお届けする、在米スポーツジャーナリスト・谷口輝世子氏の連載「Sports From USA」。米国ならではのスポーツ文化を紹介し、日本のスポーツの未来を考える上で新たな視点を探る。今回は「ユバルディが生んだメジャーリーガー」。

メッツのブルックス・レイリー【写真:AP/アフロ】
メッツのブルックス・レイリー【写真:AP/アフロ】

「Sports From USA」――今回は「ユバルディが生んだメジャーリーガー」

「THE ANSWER」がお届けする、在米スポーツジャーナリスト・谷口輝世子氏の連載「Sports From USA」。米国ならではのスポーツ文化を紹介し、日本のスポーツの未来を考える上で新たな視点を探る。今回は「ユバルディが生んだメジャーリーガー」。

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 私は2022年8月31日のこの連載「Sports From USA」で、その年の5月に起こった米テキサス州ユバルディのロブ小学校の銃撃事件を取り上げた。児童19人、教員2人が殺された。ユバルディは、人口約1万5000人の小さな街で、サンアントニオから西に130キロほど離れたところにある。この小さな街では、銃撃事件の起こった年も、リトルリーグのオールスター戦が開催されることになっていたのだが、あまりにも悲惨な事件に、開催するかどうかについて大人は悩んだ。悩んだ上で開催した。殺されなかった子どもの親のなかには罪悪感に苦しむ人もいた。子どもたちはプレーすることを必要としていたという声もあった。そんな葛藤をレポートした。

 メッツにブルックス・レイリーという左腕の中継ぎ投手がいる。1988年6月生まれの37歳。日本ではよほどのメジャー通にしか知られていない選手かもしれない。彼の出身地はテキサス州サンアントニオとなっているが、育ったのは大惨事が起こったユバルディである。事件のあった小学校に通っていた。そして、ユバルディ高校からテキサスA&M大に進み、2009年にカブスから6巡目で指名された。2012年にカブスからメジャーデビューを果たすもメジャーで生き残ることができず、数球団を転々とした後に、2014年にエンゼルスからリリースされた。その後、韓国のプロ野球KBOのロッテで5シーズンにわたってプレーし、2020年にメジャーリーグに復帰を果たした。

 事件が起きたとき、レイリーはレイズに所属していた。ホームでの試合を控えて準備しているところで最悪のニュースを耳にした。翌日、タンパベイタイムズ紙のマーク・トプキン記者の取材にこのように答えている。「まさに悲劇。あそこで育ち、あの学校に通った身としては、胸に迫るものがある。自分にも幼い子どもがいるので、ただただその家族たちのことを思う。彼らのために祈る。彼らと共にあり続ける」。ユバルディには、家族も、きょうだいも、住んでいた。

 わたしは、今年のキャンプが始まった直後、レイリーに取材を申し込んだ。「悲しい事件の話を振り返ってもらわなくてもかまわない。ユバルディという街の子どもの野球がどういうものかを教えてくれないか」。

 レイリーは快諾してくれた。

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谷口 輝世子

デイリースポーツ紙で日本のプロ野球を担当。98年から米国に拠点を移しメジャーリーグを担当。2001年からフリーランスのスポーツライターに。現地に住んでいるからこそ見えてくる米国のプロスポーツ、学生スポーツ、子どものスポーツ事情を深く取材。近著に『なぜ、子どものスポーツを見ていると力が入るのか――米国発スポーツ・ペアレンティングのすすめ』(生活書院)ほか、『帝国化するメジャーリーグ』(明石書店)『子どもがひとりで遊べない国、アメリカ』(生活書院)。分担執筆『21世紀スポーツ大事典』(大修館書店)分担執筆『運動部活動の理論と実践』(大修館書店)。

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