地方に「夢のアリーナ」を根付かせる活用術 負の遺産にさせない…沖縄バスケ界のユニークな有益モデルとは

有料化で沖縄の“永遠の課題”解決の一助に
入場を有料化したことも大きなチャレンジだった。
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沖縄は、以前から高校の県大会決勝に多くの観客が詰め掛けるほどバスケットボールが盛んな地域だ。ただ、これまで学生の大会は全て無料だった。沖縄アリーナカップの第1回大会から入場料を導入し、今回は小学生以下と初日の中高生は無料だった一方、一般は当日券価格で2千円(前売り1300円)、2日目の中高生は1300円(同800円)を徴収した。
日越会長は「初めは本当にお客さんが来てくれるか不安もありました」と明かすが、第1回から4千人以上が来場した。「選手の親戚や友人がアリーナで試合を観てみたいという気持ちがあったと思います。ハコが大きくなり、高校野球のように応援団が学校ぐるみで来てくれるようになったことも大きいです」と要因を分析する。
バスケ人気が高い地域性に加え、沖縄サントリーアリーナが持つ魅力や規模感が誘客力を押し上げていることは間違いない。
有料化した理由は大きく分けて二つある。
一つ目は、離島県である沖縄にとっての“永遠の課題”を解決する一助とするためだ。沖縄のチームが県外大会に出場する際は必ず飛行機移動となり、宿泊費も含めて多額の遠征費が必要になる。資金集めはチームや保護者らにとって極めて負担が大きい。そこで、大会収入の一部を優勝チームが全国大会に出場する際の遠征費に充てている。スポンサーの協賛金も同じ用途に使う。
県大会において、沖縄本島での試合に出場した離島のチームの遠征費補助にも利用されており、極めて意義が深い。
二つ目は、沖縄サントリーアリーナでの開催に伴う諸経費を捻出するためである。
大型施設でのイベント開催においては当然様々な経費が見込まれるが、沖縄アリーナ社も他の協賛企業と共に協賛としてそれらを補えるように協力してきている。ただ、大会の規模拡大や収益構造の改善に伴い、その負担は年々減ってきているという。日越会長は「沖縄の子どもたちのために開いているので、協会にお金が残る必要はありません。お金の流れの透明性を保ちながら運営を続けています」と強調する。
有料開催においては、沖縄アリーナ社の運営に対するコミットも欠かせない。県協会を構成する学校の先生らは大会運営には慣れているが、興行となると話は別だ。
琉球のチームを運営する沖縄バスケットボール株式会社のグループ会社であり、施設を管理する沖縄アリーナ社には興行のノウハウが蓄積されており、同社の片野竜三取締役は「沖縄市や県協会に『アリーナを聖地にしたい』『子どもたちに夢を持ってもらいたい』という思いがある中で、実際に大会を開く際のコストがどれだけかかるか、有料にした場合にどうお客さんを迎えるべきか、という細かい事業計画の立案は私たちが貢献できる部分です」と役回りを説明する。
毎年綿密に県協会とミーティングを行い、収支を確認しながら改善を重ねているという。「しっかりと収益を上げることも意識して、大会自体の自立性を高めていきたいと考えています」と片野氏。“理想”と“お金の話”を結び付け、大会が継続できる体制の構築に尽力する。
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