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アメリカでも部活内いじめが起きていた 広陵野球部に類似、告発→批判受け自粛…巻き込まれる部員の現実

「THE ANSWER」がお届けする、在米スポーツジャーナリスト・谷口輝世子氏の連載「Sports From USA」。米国ならではのスポーツ文化を紹介し、日本のスポーツの未来を考える上で新たな視点を探る。今回は「広陵高校とアメリカの運動部内いじめに共通する問題点」。

今回は「広陵高校とアメリカの運動部内いじめに共通する問題点」について【写真:ロイター】
今回は「広陵高校とアメリカの運動部内いじめに共通する問題点」について【写真:ロイター】

「Sports From USA」――今回は「広陵高校とアメリカの運動部内いじめに共通する問題点」

「THE ANSWER」がお届けする、在米スポーツジャーナリスト・谷口輝世子氏の連載「Sports From USA」。米国ならではのスポーツ文化を紹介し、日本のスポーツの未来を考える上で新たな視点を探る。今回は「広陵高校とアメリカの運動部内いじめに共通する問題点」。

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 今年の全国高校野球選手権大会で、広陵高校(広島)は1月の野球部内暴行事件が明るみに出た後、1回戦勝利後に残りの大会の出場を辞退した。1回戦を行う前に、学校は事件について日本高野連に報告しており、加害した部員を指導したうえで、一時公式戦出場を停止していたと説明し、事態収拾を図った。しかし、2023年に元部員が監督やコーチ、部員から暴力・暴言を受けたとの情報がSNSで拡散されたこともあり、2回戦への出場を辞退することに至った。現在は第三者調査委員会が事実解明を進めている。

 この広陵高校野球部の暴行に関する続報が続いていた9月、アメリカでも同じような事件が発覚した。

 9月2日、米オハイオ州ヤングスタウンの私立アーサリン高校のアメリカンフットボール部で、部員による暴行、性的にはずかしめる行為があったとして、元部員とその家族が学校側(校長らの管理職とアメリカンフットボール部のコーチ)を訴えた。

 訴状によると、2025年6月の合宿中に、複数の部員が新入生部員に対して性的な暴行を含むいじめをし、その様子をスマートフォンで撮影し、部内で共有した。被害を受けた生徒の母親がアシスタントコーチに相談したところ、「男子同士のふざけあい」と表現して、対応しなかったという。母親は校長にも動画を見せ、校長は暴行行為の重大さは認めた。しかし、十分な調査は行われず、アメリカンフットボール部では、部員に暴行事件について口外しないように伝えたという。

 そして、何事もなかったかのように、シーズン初戦の8月22日、第2戦の8月29日の試合を行った。第2戦の後の9月2日に被害者側の弁護士から裁判所に訴状が提出された。訴状が提出されると、隠ぺいはできない。ここで、学校はアメリカンフットボール部のヘッドコーチを無期限資格停止処分とし、2名のアシスタントコーチを休職とした。9月5日に予定していた試合は行わなかった。

 翌週にはこの高校に在籍していた元生徒が、2023年にアメリカンフットボール部の部員に性的いやがらせ、暴行をされたとしたと告発した。学校側に報告したにもかかわらず、学校側は措置を講じなかったと別の訴訟を起こした。これを受けて、学校はシーズンの続行は困難と判断し、9月12日に残りのシーズンはアメリカンフットボール部は試合を行わないと発表した。対戦相手校から試合は行わないという通告もされてもいた。

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谷口 輝世子

デイリースポーツ紙で日本のプロ野球を担当。98年から米国に拠点を移しメジャーリーグを担当。2001年からフリーランスのスポーツライターに。現地に住んでいるからこそ見えてくる米国のプロスポーツ、学生スポーツ、子どものスポーツ事情を深く取材。近著に『なぜ、子どものスポーツを見ていると力が入るのか――米国発スポーツ・ペアレンティングのすすめ』(生活書院)ほか、『帝国化するメジャーリーグ』(明石書店)『子どもがひとりで遊べない国、アメリカ』(生活書院)。分担執筆『21世紀スポーツ大事典』(大修館書店)分担執筆『運動部活動の理論と実践』(大修館書店)。

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