「日本でプレーしたことがない」石川祐希が勧める海外挑戦 次世代へ伝えたい「良さは間違いなくある」
石川と高橋は「選択肢が増える」こと歓迎
「海外でプレーする良さも難しさもある」と石川は話した。野球やサッカー、バスケットボールとは少し事情が違うからだ。大リーグや欧州トップリーグ、NBAと日本の国内リーグでは実力的にも年俸など待遇面でも大きな差がある。ただ、バレーボールの場合は海外と日本でそこまで大きな差はない。昨年スタートしたSVリーグでさらに環境が整備されれば、リスクをおかして海外に渡る意味も薄れてくる。
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昨年イタリアから帰国してサントリー入りした高橋藍(24)は石川の隣で「日本以外のリーグを知るきっかけになった」と口にしながらも「イタリアも日本も良さはある」と言い切った。SVリーグでプレーする海外のトップ選手も少なくない。SVリーグが「世界最高峰のリーグ」を目指すのも、日本と海外に大きな差がないからだ。
それでも「レベルアップ」だけを考えれば、やはり海外の経験は小さくない。普段のリーグ戦から世界中のトップ選手と対戦し、その高さやパワーに慣れることができる。様々なタイプの選手と組み、対戦することでプレーの幅も広がる。もちろん、経験を積む中で精神的にたくましくなることも大きいだろう。
今大会もペルージャが危なげなく2連勝した。リーグ開幕を控えた練習試合の要素も強く、メンバーを入れ替えながらの非公式戦だけに単純な戦力比較は難しいが、試合中の修正力やプレーの正確性などは欧州王者が段違いに上にみえた。高橋はサントリーとしての目標に「世界一」を掲げるが、まだ差はあるように思う。
日本と欧州など海外チームの差がそこまで大きくなく「どちらもいい」ことを前提にしながらも、石川と高橋は「選択肢が増える」ことは歓迎した。バレーボール界では高校、大学を経て実業団に入るのが一般的だった。「日本リーグでプレーして、全日本(日本代表)で活躍する」のが、かつてのゴールだった。しかし、海外クラブの存在が知られ、そこで活躍する日本人選手を見れば「自分も」と思う子どもがでてくるのは間違いない。
サッカーでは1998年W杯日本代表は全員がJクラブ所属だった。大会後に中田英寿がペルージャ(バレーボールとは別のクラブ)に移籍し、一気に選択肢が広まった。多くの選手が中田に続き「海外でのプレー」を目指す子どもも増えた。それまでは「日本チームからの移籍」が一般的だったが、高校から直接海外に渡る選手も現れた。欧州でプレーする選手が増えて競技力も向上。今や日本代表のほとんどは海外組だ。
「最後は自分自身の判断」と言いながらも、石川の言葉からは「自分に続いてほしい」という思いがあふれていた。「常に子どもたちの選択肢が増えるきっかけになってくれればいいと思いながら、イタリアでプレーを続けている」。多くの選択肢の中から早い段階で海を渡ることを選択する次世代選手が増え、それが日本バレーボールのレベルアップにつながることを夢見ながら、石川はイタリアで世界と戦う。
(荻島 弘一 / Hirokazu Ogishima)
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