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ユース年代の“球数制限ルール”はTJ手術を防いだか 故障割合が再び上昇、2つの要因「今日の投手たちは…」

「THE ANSWER」がお届けする、在米スポーツジャーナリスト・谷口輝世子氏の連載「Sports From USA」。米国ならではのスポーツ文化を紹介し、日本のスポーツの未来を考える上で新たな視点を探る。今回は「ユースの投球数制限規則の検証」。

今回は「ユースの投球数制限規則の検証」について(画像はイメージ)
今回は「ユースの投球数制限規則の検証」について(画像はイメージ)

「Sports From USA」―今回は「ユースの投球数制限規則の検証」

「THE ANSWER」がお届けする、在米スポーツジャーナリスト・谷口輝世子氏の連載「Sports From USA」。米国ならではのスポーツ文化を紹介し、日本のスポーツの未来を考える上で新たな視点を探る。今回は「ユースの投球数制限規則の検証」。

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 今年の年明け、高校野球連盟がピッチャーの投球数を1週間で500球までと定めた。2020年から試験的に導入されていたが、今年から正式なルールとなった。

 米大リーグ機構と米野球連盟が共同で、ユース年代の投球数制限規則を設けたのは2014年のことだ。7歳から22歳までを対象にしたもので、年齢ごとの投球数制限と休養日数を定めた。投球過多は肘や肩を痛める要因のひとつであり、特にトミー・ジョンと呼ばれる肘の内側側副じん帯の修復手術を受ける子どもたちが増えたことに危機を感じて作られた。2007年から11年に、民間の健康保険を使ってトミー・ジョン手術を受けた人たちを調べたところ、全ての手術のうち、15歳から19歳が56.8%を占めたというデータがある。

「ピッチスマート」と称された基準は、例えば、11歳から12歳の投球数は1日に85球までとし、66球以上投げた場合は、4日間は投げられないとするもの。日本の高校野球年代に相当する17歳から18歳は、1日に105球までとし、81球以上投げた場合は中4日、80球投げた場合は中3日、60球投げた場合は中2日、45球以上は中1日と規定している。休養日を入れなくてよいのは30球未満だけである。

 この「ピッチスマート」導入から10年あまりが経過した。投球数と休養日規則は、トミー・ジョン手術の件数を減らすことに貢献できたのだろうか。昨年、米野球連盟の医療安全委員長で「ピッチスマート」の開発にも携わったグレン・フライシグ博士にメールで取材をした。

 フライシグ博士は「しばらくの間、アマチュアおよびプロ野球における投手のけがの割合は、20年前の流行的な増加からは落ち着き、ようやく正しい方向に進んでいるように見えました。しかしながら、現在ではアマチュアおよびプロ野球におけるけがの割合が再び上昇しており、その割合は容認できないほど高くなっています。私たちは、この最近の増加には2つの根本的な要因があると考えています」とした。

 投球数と休養日規則は一定の効果はあったと考えられている。リトルリーグワールドシリーズ出場選手からプロ選手になった人たちを追跡調査した結果、投球数制限を守っていた選手のほうが、プロ入り後にトミー・ジョン手術を受ける割合が明らかに低いというデータも出た。しかし、再び肘の怪我が増えている要因とは何なのか。

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谷口 輝世子

デイリースポーツ紙で日本のプロ野球を担当。98年から米国に拠点を移しメジャーリーグを担当。2001年からフリーランスのスポーツライターに。現地に住んでいるからこそ見えてくる米国のプロスポーツ、学生スポーツ、子どものスポーツ事情を深く取材。近著に『なぜ、子どものスポーツを見ていると力が入るのか――米国発スポーツ・ペアレンティングのすすめ』(生活書院)ほか、『帝国化するメジャーリーグ』(明石書店)『子どもがひとりで遊べない国、アメリカ』(生活書院)。分担執筆『21世紀スポーツ大事典』(大修館書店)分担執筆『運動部活動の理論と実践』(大修館書店)。

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