150cm台の選手も…「学生みたいなチーム」を目指す理由

　沖縄県を本拠地とするハンドボール「リーグH」男子の琉球コラソンが6月末、2025-26シーズンに向けて新監督の就任を発表した。名門・興南高校で約40年に渡って監督を務め、全国優勝を14回成し遂げた黒島宣昭氏だ。リーグH初年度の昨季は4勝21敗1分で14チーム中12位となり、日本リーグ（JHL）最終年度だった前期と同じ勝ち星数で低迷が続くコラソン。浮上に向けて高校カテゴリーの名将に指揮を託したのには、二つの意図がある。キーワードは「学生みたいなチーム」と「教え子の回帰」だ。

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「コラソンの一員になれたことを誇りに思います。熱い応援に応えられるように一つでも多く勝利し、感動を与えられるように頑張っていきます。目標はプレーオフ進出です」

　7月2日に沖縄県庁の記者クラブで開かれた就任記者会見。引き締まった表情の黒島氏が、歯切れ良く決意を述べた。

　1961年1月生まれの64歳。日本体育大学を卒業後、1983年に母校・興南高校の監督に就いた。一線ディフェンスが主流だった時代、小柄な選手が多い沖縄のチームが全国と伍する力を身に付けるため、高い位置から積極的にプレッシャーを仕掛けて速攻につなげる「1-2-3」の陣形も採用。スピード重視のスタイルを武器に1999年の選抜大会で初めて全国制覇を果たし、2005年と2014年には選抜、高校総体、国民体育大会の全国3冠を達成した。副校長も兼任し、2024年3月で興南高校を退職した。

　コラソンも小柄なチームだ。中学校の同級生で、旧知の仲である前任の東江正作氏が築いた1対1の強さやペースの速さを重視したスタイルは踏襲する。その上で、「体格的には（他チームに）劣っているので、誰が出てもスピード感あふれるハンドボールができたら、上位のチームにも勝負ができると思っています」と、体力面と総合力をさらに底上げするつもりだ。

　教員時代の終盤は総監督となってメインの指導を後進に譲り、一線を離れて数年が経つ黒島氏。コラソンが白羽の矢を立てた理由は何だったのか。

　クラブの水野裕矢代表は「Jリーグ・町田ゼルビアの黒田剛監督のように高校の名将がトップリーグに入り、新しいアクセントを付けてチームが変わったという例をいくつか見てきました。それが一番期待している部分です」と説明する。

　2023年に黒田監督が就任後、プロでは珍しいロングスローを多用する戦術が町田の代名詞の一つとなり、賛否を巻き起こしたことは記憶に新しい。チームは1年で初のJ2優勝・J1昇格を達成。この経過を念頭に、水野氏は「高校でよく使われるロングスローとか、トップリーグではあまりやらないようなことをして批判も受けていましたが、町田はルールの中で結果を残しました。自分たちも良い意味で、高校生のようなチームになりたいと考えています」と見通す。

　自身もコラソンの元選手である45歳の水野氏。「僕が現役の頃はとにかく練習で走りまくっていましたが、今のリーグHは、週2日くらいはウエイトトレーニングを集中的にやるのが主流です。欧州のように大柄でフィジカルの強い選手が増えました」とトレンドの変化を感じている。

　それでも、来季に向けては身長150cm台の選手もコラソンに加入予定だという。黒島監督が興南高校で培ってきたスピード重視の戦術にマッチした布陣で挑む。

　潮流に抗う理由はこうだ。「小さい選手たちが大きい相手を倒したら、小柄な沖縄の選手たちが『ああいう選手になりたい』と憧れてくれると思います。そこに変化も生まれてくる。リーグの主流の戦い方ではなく、学生みたいなチームを作っていきたいです」。低迷を打破するため、異色の戦い方に活路を見出す。