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あの日、世界最強だったアーモンドアイの「2.20.6」 レース直前、初めて生で見て「ホッとした」理由

秋の東京開催のクライマックスとなるG1ジャパンカップ(JC)が24日、東京競馬場の芝2400メートルを舞台に発走となる。日本と世界の一流馬による真剣勝負も今年で44回目。創設当初は世界の壁に跳ね返された日本馬だったが、昨年のイクイノックスの衝撃走を筆頭に、今や世界に日本馬の存在感を示すレースとなった。調教を通じてさまざまな視点から過去のG1レースを振り返る企画「調教捜査官の回顧録」を寄稿する競馬ライターの井内利彰氏にとって、発走前から「ホッとする」瞬間があったという6年前の11月25日のJC。衝撃の世界レコード「2分20秒6」で駆け抜けたあの日、世界最強だった3歳牝馬への評価を含め、調教捜査官としての責務を果たせた納得のレースだったという。

2018年のジャパンカップ、2分20秒6の世界レコードで完勝したアーモンドアイとクリストフ・ルメール騎手【写真:Getty Images】
2018年のジャパンカップ、2分20秒6の世界レコードで完勝したアーモンドアイとクリストフ・ルメール騎手【写真:Getty Images】

アーモンドアイが衝撃レコードで勝った2018年のジャパンカップ

 秋の東京開催のクライマックスとなるG1ジャパンカップ(JC)が24日、東京競馬場の芝2400メートルを舞台に発走となる。日本と世界の一流馬による真剣勝負も今年で44回目。創設当初は世界の壁に跳ね返された日本馬だったが、昨年のイクイノックスの衝撃走を筆頭に、今や世界に日本馬の存在感を示すレースとなった。調教を通じてさまざまな視点から過去のG1レースを振り返る企画「調教捜査官の回顧録」を寄稿する競馬ライターの井内利彰氏にとって、発走前から「ホッとする」瞬間があったという6年前の11月25日のJC。衝撃の世界レコード「2分20秒6」で駆け抜けたあの日、世界最強だった3歳牝馬への評価を含め、調教捜査官としての責務を果たせた納得のレースだったという。

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 私がラッキーライラックをデビュー前から応援し続けていたことは、先日のエリザベス女王杯の回顧で書かせていただきました。そのラッキーライラックを桜花賞で負かし、その後のオークス、秋華賞も勝って、牝馬三冠を成し遂げたのがアーモンドアイ。その勢いでジャパンカップへ出走したのが、2018年のことでした。

 ラッキーライラックが負けた相手ですから、桜花賞の時はライバル心の方が強く、オークスでは「逆転できる」なんて思っていましたが、オークスでも完敗。アーモンドアイは同じ物差しで比べてはいけないかも、と考えを改めて秋を迎えます。

 秋華賞はアーモンドアイに本命で仕方ないと思っていたところ、最終追い切りが坂路。デビューからずっと最終追い切りは「美浦W」でしたが、それが坂路に変更になったということは何かいつもとは違うことがあったということです。これが調教捜査官としての基本になりますから、さすがに本命を打つことができませんでした。それでも1着になったわけですから、いつも通りの調教パターンでなくとも勝てる。つまり、同世代には敵なしというわけです。

 そして迎えたJC。最終追い切りはこれまでと同じ「美W」へ戻りましたし、調教パターンから疑う余地はありません。圧倒的人気になることは承知の上で「◎」を打ちました。レース当日は東京競馬場にいて、パドックを見ることもできました。実はアーモンドアイのパドックを生で見たのはこの時が初めて。1枠1番だったこともあり、真っ先にパドックへ入場してきましたが、その瞬間に感じたこと。それが「きれいな瞳をしている」ということでした。

 アーモンドアイとは人間の眼の表現としても使う「魅力的な目」のことですが、まさに馬名に偽りなし。テレビやモニターで見る時とは全く違う、見ている側に訴えかけてくるような視線を放っているんですよね。体つきはやっぱり一流の牡馬、キセキやスワーヴリチャード、シュヴァルグランといったところに見劣りするようなところはありましたが、歩く雰囲気は全く負けていません。むしろ、14頭の中で一番堂々と歩いているといっても良いでしょう。

 恥ずかしながら、このJCがアーモンドアイに初めて「◎」を打ったレースでしたが、この姿を見て「やっぱり本命を打ってよかった」とホッとしたことを覚えています。

 走ってもいないのに、結果も出ていないのに、ホッとするっておかしなことかも知れません。ただ、私としては調教予想で印を打っている以上、パドックで自分が確認して納得するような状態なら、それで印を打った責務は全うしたと考えています。パドックはこれまでの調整過程が集約され、その最終形となって表れたもの。だからこそ、トレセン取材のように限られた人しか入れないものではなく、競馬場へ来てくださった皆様に披露しているんだと私は考えています。

 パドックなんて見ても分からない。そうですね、でもそれは馬券を当てたいと思うから分からないだけで、その馬がどんな様子で歩いているかということは読み取れると思います。活気がある、落ち着いている、入れ込んでいる。馬券を当てるために見るのではなく、自分の「推し」がどんな姿で歩いているのか。それを見て「これなら信じて応援できる」と思った時に馬券を買えばよいのではないでしょうか。

 今週のJC。幸い、パドックを東京競馬場で見ることができそうなので、私の「推し」がどんな姿で登場してくれるのか。今から楽しみです。

(井内 利彰 / Toshiaki Iuchi)

井内 利彰

調教をスポーツ科学的に分析した適性理論「調教Gメン」を操る調教捜査官。競馬予想TV!(フジテレビONE)に出演中。JRAの競馬場、ウインズのイベントに出演し、JRA主催のビギナーズセミナーの講師としても活躍。著書に「競馬に強くなる調教欄の取扱説明書」「調教Gメン-調教欄だけで荒稼ぎできる競馬必勝法」「調教師白井寿昭G1勝利の方程式」などがある。

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