三冠牝馬を猛追した愛馬「勝てなかったけど褒めてあげたんだろうな…」 1通のメールに滲み出た調教助手の愛情【2012年秋華賞・アロマティコ】
中央競馬は秋のG1シーズンに突入し、今週は3歳牝馬の三冠最終戦となる秋華賞が13日に京都競馬場で行われる。数々の名勝負が繰り広げられ、歴史的なシーンも生まれてきたレースを前に、これまで多くの名馬たちの調教を見てきた「調教捜査官」こと、競馬ライターの井内利彰氏がTHE ANSWERに初登場。調教を通じてさまざまな視点から過去のG1レースを振り返る新企画「調教捜査官・井内利彰の回顧録」がスタートする。第1回は三冠牝馬が誕生した12年前のレースで抜群の気配を見せていた一頭の思い出を語ってくれた。
競馬ライター・井内利彰氏が語る思い出の秋華賞
中央競馬は秋のG1シーズンに突入し、今週は3歳牝馬の三冠最終戦となる秋華賞が13日に京都競馬場で行われる。数々の名勝負が繰り広げられ、歴史的なシーンも生まれてきたレースを前に、これまで多くの名馬たちの調教を見てきた「調教捜査官」こと、競馬ライターの井内利彰氏がTHE ANSWERに初登場。調教を通じてさまざまな視点から過去のG1レースを振り返る新企画「調教捜査官・井内利彰の回顧録」がスタートする。第1回は三冠牝馬が誕生した12年前のレースで抜群の気配を見せていた一頭の思い出を語ってくれた。
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調教捜査官の井内利彰です。調教捜査官というのは職業名ではなく「競馬予想TV!」(フジテレビONE)に出演している時のニックネームになります。普段は栗東トレーニングセンターで馬の調教を見ています。週末はJRA競馬場にてビギナーズセミナーの講師を担当したり、競馬イベントに出演させていただいています。
今回は私の思い出のG1を振り返るということで、一般的な勝ち馬中心の回顧ではなく、あくまで私の主観で回顧しています。その中で取り上げたのが2012年の秋華賞。私は「調教」を予想の根幹としていますが、調教の中でも何を重視するかはそのレースの傾向を探ってから決定します。この時の秋華賞は過去10年(2002年~2011年)の勝ち馬10頭のうち、5頭が該当していた「追い切りの本数の多い」という内容を重視しました。
牝馬は牡馬に比べて気性が繊細なので、追い切り本数の多い馬が好走するレースは少ないのですが、ここは牝馬三冠の最終戦。G1ということもあって、激しいレースペースに耐えうるためには調教量が重要ということが過去10年の結果として表れているのだと判断しました。
そこで本命を打ったのがアロマティコ。前走で自己条件、1600万下(現3勝クラス)のムーンライトハンデキャップを勝つことができなかったので、実績的には他の出走馬に見劣っていましたが、中2週のローテーションに対して、坂路とCWで計4本の追い切りを消化。こんなに調教の負荷を強めて大丈夫なのかなと逆に心配になるような調教量でしたが、担当する野口陽介調教助手は「中間は攻めているので、飼葉の量も増やしているんですが、それをしっかり食べてくれます」とアロマティコのタフさを強調してくれていました。
調教予想というのは追い切りの動きを見て良し悪しを判断することがほとんど。でもその動きは見る人によって意見が分かれるため、主観的な判断にすぎません。しかし、過去の勝ち馬の調教パターンを分析して、今回の出走馬でそれに合致している馬を見つける方法は誰がやっても同じ結論に至ります。これが客観的な調教予想だと考えています。