2028年ロス五輪追加競技「フラッグフットボール」とは タックルのないアメフトが高校女子で選手急増の背景
「THE ANSWER」がお届けする、在米スポーツジャーナリスト・谷口輝世子氏の連載「Sports From USA」。米国ならではのスポーツ文化を紹介し、日本のスポーツの未来を考える上で新たな視点を探る。今回は「ロス五輪の追加競技・フラッグフットボール」について。
「Sports From USA」―今回は「ロス五輪の追加競技・フラッグフットボール」
「THE ANSWER」がお届けする、在米スポーツジャーナリスト・谷口輝世子氏の連載「Sports From USA」。米国ならではのスポーツ文化を紹介し、日本のスポーツの未来を考える上で新たな視点を探る。今回は「ロス五輪の追加競技・フラッグフットボール」について。
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今年2月、NFLタンパベイバッカニアーズが主催したフロリダ州の高校生女子のフラッグフットボールのプレシーズンイベントを取材した。会場には1000人以上の高校生選手が集まり、壇上には、NFLの役員、米フットボール連盟、国際アメリカンフットボール連盟の副会長、女子フラッグフットボールの米国代表QBのバニタ・クローチ、フロリダ州タンパ市長らが並んだ。
フラッグフットボールは、ひとことでいえば、アメリカンフットボールからタックルをなくしたもので、タックルの代わりに腰につけたフラッグを捕る。2028年のロス五輪では追加競技になることが決まっている。
フロリダ州の高校体育協会はアメリカの各州の高校体育協会のなかでは、最も早い時期である2003年から女子のフラッグフットボールの州大会を主催している。このときには、オリンピックの追加競技になると予想していなかったかもしれないが、学校の運動部で女子フラッグフットボールが行われるようになったのは、ある連邦法が関係している。
アメリカでは1972年に連邦政府の補助を受けている教育機関における性差別を禁じるタイトルIX法が成立した。つまり、女子にも男子と同等の運動部を含む課外活動の参加機会を保障するということだ。この連邦法によって、女子の運動部数が増えていった。学校としては、多くの生徒に活動機会を与えることのできる競技種目は、タイトルIXを守るうえで都合がよかった。フラッグフットボールは1チーム5人で編成されるが、高校のフラッグフットボールは7人制としていることが一般的で、攻撃、守備とがわかれるのであわせて14人編成で、ベンチ入りもあわせると20人程度の運動部にできる。
高校女子のフラッグフットボールは、現在は12の州の高校体育協会が種目として採用しており、このほかの19州でも試験的に導入されている。各州の高校体育協会をまとめるNFHSによると、高校女子フラッグフットボールの参加者数は2022-23年から2023-24年にかけて2倍以上に増加し、前年の2万875人に対し、2023-24年には合計4万2955人の女子がフラッグフットボールに参加したという。この急激な増加はオリンピックも意識されているのだろう。筆者が見た、2月のプレシーズンのイベントでも、オリンピックの話題があがっており、会場にはU18の米国代表に選出された選手もいた。
しかし、オリンピックと聞いても、会場にいた多くの高校生たちにとっては遠い夢で、その場にいた全員から歓声が沸き起ったわけではない。自分にもチャンスがあると心の底から思った選手はそれほど多くはなかったと思う。