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改めて考えるオリンピックの意味 「メダルの数」で評価される限り、日本のスポーツ文化は成熟しない――中京大教授・來田享子

メダル数で競技団体が評価される限り、日本のスポーツ文化は成熟しない

 一方で、「勝利か敗北か」という価値の一元化にはまりやすいのもスポーツです。勝敗があるから仕方ないのですが、しかし、勝ち負けやメダルの数にこだわることは、結果的にスポーツの価値を矮小化し、スポーツの進化を削ります。

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 メダルを獲った数で競技団体が評価される限り、日本のスポーツ文化は成熟しません。例えば私は、メダルをたくさん獲った競技団体にたくさんの公費が出るのではなく、スポーツがどう人を幸せにできたかが評価されるべきだと考えます。

 障がい者の参加率が上がったとか、多様性を高めるためにどれだけ努力をしたかとか、スポーツを通じて「楽しかった」「生きていて良かった」と思える人が一人でも増える活動に対し予算がついていく。そういう世界になって初めて、日本社会にスポーツ文化が根付いたと言えるのではないでしょうか。

 もしもスポーツによって育まれることがあるならば、それはやはり人間としての在り方だと思います。

 ですから、「勝たないとスポーツではない」「強ければ体罰も許される」と、単純な勝ち負けの図式に押し込まれそうになる瞬間を、私たちは見過ごしてはいけません。

「お前はそう思うかも知れないが、自分はこう思うよ」とチーム内で意見を言い合えることは、スポーツを愛する人たちの一つの良さです。

 アレ? と思うことがあったら、見て見ぬ振りをしたり、見逃したりしないことはとても大事です。「それはちょっと違うんじゃない?」と自分の意見を口に出せる価値、大らかでオープンな空気を大事にして欲しい。これは、差別や排除をなくすことと似ています。

 そうやって、一人ひとりが価値の一元化に徹底して戦う。その先に成熟したスポーツ文化、ひいては社会が育まれていくと思います。

■來田享子 / Kyoko Raita

 中京大学スポーツ科学部・大学院スポーツ科学研究科教授。博士(体育学)。日本体育・スポーツ健康学会、日本スポーツとジェンダー学会会長。日本オリンピック委員会理事、日本陸上競技連盟常務理事。神戸大卒、中京大大学院博士後期課程修了。2008年より現職。オリンピック史やスポーツにおけるジェンダー問題を専門とする。中京大学スポーツミュージアム館長。『よくわかるスポーツとジェンダー(ミネルヴァ書房)』でJSSGS学会賞受賞。国際オリンピック史家協会“Vikelas Plaque”受賞。

(THE ANSWER編集部)


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