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バレーボール新リーグ成功の鍵は「箱推し」 独特のアイドル風潮、求められる単推しからの変革【記者コラム】

「カズの人気に頼っていては、リーグの成功はない」 Jリーグも当初から求めてきた箱推しファン

 だからこそ、大河氏は「単推しのファンが箱推ししてくれるようにすることが大切」と完全プロ化を見据えて話した。そのために「各チームが地域から愛されること」。選手がプロになれば、移籍も活発化するはず。石川祐希や高橋藍のように海外に出る選手も増えるだろう。現状のような選手人気主導ではリーグはもたない。チームの人気でリーグを支えていかなければ、成功はない。

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 Jリーグ発足当時、川淵チェアマンは「カズの人気に頼っていては、リーグの成功はない」と言った。特定の選手だけが「単推し」されても意味はない。各チームに「箱推し」するサポーターがつかなければ、リーグは長く続かないということだった。各チームに「箱推し」ファンをつけるための地域密着。それを徹底したからこそ、Jクラブは30年で発足時の6倍の60まで増えた。

 スポーツ界は保守的で、変革を嫌う傾向は今も根強い。サッカーのプロ化には日本協会や各企業チームが「時期尚早」と反対したし、バスケットボールも2つのリーグが長く混在したままだった。それでも、サッカーにはアジアで勝てずに世界から離されていく危機感があった。バスケットボールにも世界舞台に出られなくなるという外圧があった。どちらにも、プロ化の必然性があった。

 バレーボールは過去にもプロ化が模索されてきたが、変革を嫌う「保守層」に阻まれてきた過去がある。サッカーやバスケに比べれば世界的な実力はあるし、リーグの人気もそれなりにはある。「現状維持」を求める力が小さくないのも分かる。だからこそ、SVリーグは急激な変化を避けて段階的にプロ化を目指すのだろう。

 Jリーグの常務理事やBリーグのチェアマンを歴任してきた大河氏だけに、秘策はあるはず。会見では「JリーグやBリーグにないものを考えている」とファンの期待を高めるような発言もあった。いずれにしても、バレーボール独特の「推し」文化を使わない手はない。選手への「単推し」がチームやリーグへの「箱推し」になった時こそが、バレーボールのプロ化が成功する時だ。

(荻島 弘一 / Hirokazu Ogishima)

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荻島 弘一

1960年生まれ。大学卒業後、日刊スポーツ新聞社に入社。スポーツ部記者としてサッカーや水泳、柔道など五輪競技を担当。同部デスク、出版社編集長を経て、06年から編集委員として現場に復帰する。山下・斉藤時代の柔道から五輪新競技のブレイキンまで、昭和、平成、令和と長年に渡って幅広くスポーツの現場を取材した。

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