「もう一度、選手として戦いたい」 車いすの元サッカー選手・持田温紀、3年の時を超えた運命的な挑戦
試合前日のホテルで各国の選手と交流
持田さんはサッカー日本代表が強豪ドイツとスペインを破り、ベスト16に進出した2022年カタール・ワールドカップ(W杯)を現地観戦。グループリーグ第3戦の日本VSスペインの試合ではFIFAスタッフから声をかけられ、日本代表の選手とともにピッチへ入場。主将の吉田麻也(現・LAギャラクシー)と肩を組んで国歌斉唱をした姿は、当時大きな話題となった。
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そんな“奇跡”と呼べる出来事とともに、持田さんにとって忘れられない思い出となっているのが、世界中から集まったファンと、カタールW杯の試合会場で交流したことだ。サッカーという1つのスポーツを通じて、言葉や文化の違いを超えて心を通わせることができた体験は、その後の生き方に大きな影響を与えている。
今回もパラダンススポーツを通じて、世界中の人たちと交流したい――。そんな衝動に駆られた持田さんは試合前日、宿泊先のホテルの食事会場で突如手を叩き出し「みんなで一緒に歌おう」と誘った。
「ピカチュウソングをみんなで一緒に歌ったんです。そうしたら海外の選手が僕のことを面白がってくれて。僕は全然期待される選手ではなかったのですが、試合当日は海外の選手たちも僕の演技を見に来てくれて盛り上げてくれました。そうした交流が僕の気持ちをより高め、演技に想いを込めることができたのだと思います」
演技後、代々木第一体育館で多くの友人やパラダンススポーツの仲間から拍手を浴びる持田さんは、1人の選手として誰にも負けない輝きを放っていた。そしてこの大会で8位に入賞したことで、4年ぶりの開催となったパラダンススポーツ世界最高峰の大会、2023年11月にイタリア・ジェノバで行われた世界選手権への出場が決定する。
「競技は違えど、まさか自分が日本代表の選手としてイタリアへ行き、カタールW杯のちょうど1年後にワールドチャンピオンシップス(世界選手権)の舞台に立つとは……」
前向きな挑戦が、新たな奇跡を呼び込んだ。
(THE ANSWER編集部・谷沢 直也 / Naoya Tanizawa)