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定員45人のサッカー部に300人トライアウト参加 あふれた生徒の機会損失も補う部活の地域展開とは

実際に高い評価を受けた取り組みを紹介

 高い評価を受けたいくつかの取り組みを紹介してきたい。

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 郊外の公立大規模校(生徒数1000人以上)部門では、全校生徒が約4100人のバージニア州のアレクサンドリア市高校からだ。45人しか入部できないサッカー部(恐らく1軍と2軍の2チーム編成)に300人の生徒がトライアウトに参加するという。ここでは、チームに入れない250人あまりの生徒はサッカーをする機会を失っていたのだが、高校のサッカー部が地域のサッカー協会と提携して、ここで、無料でプレーできるようにした。学校はその引き換えとして地域のサッカー協会が高校のグラウンドを使用することを認めた。

 この学校のアスレチック・ディレクターのジェームス・パーカーさんは「幼い年代では、お金を払わないとサッカーやバレボール、他のスポーツはできなくなっています。マイノリティの生徒の多くは、高校運動部の競技レベルが高すぎて、トライアウトでカットされてしまいます。我々は、彼らを包摂する必要があります」。つまり、高校に入る前の小学生や中学生の段階で、マイノリティの子どもの多くは、お金がかかるためにスポーツの機会が少なく、高校の運動部のトライアウトで落とされていた。それを、学校と地域とが連携することで彼らにもスポーツ機会を保障している。

 また、都市部の公立大規模校部門で高評価を受けた学校のひとつに、イリノイ州のサウスサイド高校がある。この高校に通う多くの生徒の保護者は健康保険を持っていない。高校の運動部に入るにはイリノイ州の高校体育協会から健康診断を受けることが義務付けられているが、これを健康保険でカバーすることができず、自費で受けることも難しい。そこで、学校は、慈善団体のロナウド・マクドナルド・ハウス(日本ではドナルド・マクドナルド・ハウス)に支援を求め、ロナルド・マクドナルド・ハウスが無料で運動部活動に必要な健康診断を提供することになった。

 都市部の公立小規模校部門で取り上げられたミネソタ州のルーズベルト高校では、身体的障害のある生徒に運動する機会を保障している。これは、ルーズベルト高校だけで完結しているのではなく、ミネアポリス公立学区の他の学校の生徒との合同活動である。ちなみに、ミネアポリス公立学区には高校だけで12校あるので、これらの学校と合同で活動していると思われる。

 このほかには、生徒からの要望でヨガクラブを立ち上げている学校が多い。ヨガは対外試合を含まず、始業前の時間に活動しているクラブも少なくない。こういったクラブであれば、学業や他の活動と両立しやすい。

 こういった取り組みは、アメリカでも限定的だろう。それでも、アスペンのように、8つのカテゴリーにわけて実態を数字で示して、課題を浮き彫りにしたうえで、新しい取り組みをしている学校について、データと事例とを紹介していくのは、他の学校運動部や地域スポーツの関係者に着想を与えるという意味で有用だと感じた。

(谷口 輝世子 / Kiyoko Taniguchi)

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谷口 輝世子

デイリースポーツ紙で日本のプロ野球を担当。98年から米国に拠点を移しメジャーリーグを担当。2001年からフリーランスのスポーツライターに。現地に住んでいるからこそ見えてくる米国のプロスポーツ、学生スポーツ、子どものスポーツ事情を深く取材。近著に『なぜ、子どものスポーツを見ていると力が入るのか――米国発スポーツ・ペアレンティングのすすめ』(生活書院)ほか、『帝国化するメジャーリーグ』(明石書店)『子どもがひとりで遊べない国、アメリカ』(生活書院)。分担執筆『21世紀スポーツ大事典』(大修館書店)分担執筆『運動部活動の理論と実践』(大修館書店)。

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