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天才レフティーも認めた久保建英の「CREMA」 10代で何度も逆境に直面、克服し増した“深み”

フランも認めていた久保建英の才能

「運がない」

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 指導者次第で、恵まれた環境にない選手もいる。しかし厳しいようだが、それも何らかの創意工夫で乗り越える者だけが、高みに辿り着ける。なぜなら、どうにかタイミングを得て試合に挑んだとして、上手くいかないことのほうが多い。人生はその連続である。逆境でどう振る舞うか――。その行動にこそ、一流と普通の差が出るのだ。

 能力が際立った選手は、言語化が難しい空気感を放ってプレーするところがある。

「何かやりそうな予感がある」

 そうした漠然とした期待感というのか。同じ技術を出すのでも、どこか周りと違う。芳醇な香りが立つような感じは、天才性とも訳せるかもしれない。

「CREMA」

 スペイン語でクリームを意味するが、「極上な部分」とも訳せる。それは一流選手の特有の特徴と言える。例えばエスプレッソやカフェラテやビールの泡の部分を指し、儚く消えてしまうが、そこに「うまみ」が詰まっているというのか。

 FCバルセロナ(バルサ)で育成年代を過ごしていた久保建英は、当時CREMAの評価をほしいままにしていた。スキル、ビジョンが特別だっただけでなく、フィニッシュワークも高く評価された。ゴールという最も難しい作業で、豊かな香りが漂った。アンス・ファティ、エリク・ガルシアという、のちにスペイン代表にもなる世代を引っ張っていた。

「(バルサのこの世代は)タケ(久保)が残っていたら、メッシ、セスク、ピケがいた黄金世代の再現になったかもしれない」

 元スペイン代表で、1990年代から2000年代のデポルティボ・ラ・コルーニャで華々しい活躍を遂げた天才レフティー、フランはそう語っている。 当時、彼は息子であるニコ・ゴンサレスが久保と同じチームだったことで、その世代に精通していた。

「タケは技術的に申し分ない。性格的にも強さを感じるし、ゴールへの意欲もある。CREMAを感じる少年だよ」

 フランはそう言っていたが、左利きの背番号10だった彼から見ても、久保は異彩を放っていたという。

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小宮 良之

1972年生まれ。大学卒業後にスペインのバルセロナに渡り、スポーツライターに。トリノ五輪、ドイツW杯を現地取材後、2006年から日本に拠点を移す。アスリートと心を通わすインタビューに定評があり、『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など多くの著書がある。2018年に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家としてもデビュー。少年少女の熱い生き方を描き、重松清氏の賞賛を受けた。2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を上梓。

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