川島永嗣に今、問いたい 「やりたい子がいないから」で決める日本のGKとこれから
“まだ見ぬ日本の守護神”に贈る言葉「シュート止める喜びを感じて」
自身にとって生涯一番のセーブは? そう問うと、GKらしい答えが返ってきた。
「僕からしてみると、練習で誰も見ていないセーブも美しいし、止める時の感情は試合と変わらないもの。一つを選ぶのは難しい。仮にスーパーセーブが一つあったとしても、GKは次のシーンでセーブしなければ意味がない。だから、一つというものにあまりこだわりはないですね」
一流と思うGKの条件については「すべての状況において、その人が考える理屈がある。ポジショニング、キャッチの仕方もそう。プレーを見ていて感じる瞬間があるし、それが見えるGKがいいGKと思います」と挙げる。そんな才能あふれるGKが日本サッカーにも増えてほしいから、裾野からGK人口の拡大を望んでいる。
「日本では、誰もやりたくないからGKをやらされるという文化。でも、僕も好きでやっているように、きっかけは見ていて『カッコいいから』という単純なものでいいと思う。そういう子供たちが増えてくれるといいなと思うし、自然と多くなることで、より日本の中でGKの文化が根付いてくるのではないかと感じます」
W杯で3大会、日本のゴールマウスを守り、堪能な語学も駆使しながら、海外で長年プレーしてきた。“まだ見ぬ日本の守護神”に今、GKの魅力を伝えるならどんな言葉を贈りたいのか。
「シュートを止めた時の喜び、じゃないですかね。それ以外にないと思うし、むしろ小さい子に一番感じてもらいたい。そのためにはミスを恐れずに素晴らしいものを目指してもらいたい。GKは常にミスと隣り合わせではあるけど、リスクを冒していかないと最高のものが生まれることはない。だから、狭間は常に葛藤ある。
その中で、若いGKにはミスを恐れず、最高のものを目指してもらいたい。自分自身、90年W杯のゴイコチェア(アルゼンチン)の映像を見て影響を受け、松永成立さん、川口能活さん、楢崎正剛さんと偉大なGKを見て育ってきたので、今度は自分が今、子供たちにそう思ってもらえるように努力していきたいと思っています」
そして、日本サッカー界にとっても次代を担う才能の出現を待ち望んでいる。
「どんなGKをとひと言で言うのは難しい。ノイアー(ドイツ)がやっていることはナバス(コスタリカ)にできないし、デヘア(スペイン)がやっていることはクルトワ(ベルギー)にできない。それぞれの良さがある。だから、理屈じゃなくシュートを止めるという情熱を持ったGKが増えてほしい。方法論はたくさんあるけど、それを突き詰めているGKが増えてほしいと思います」
(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)