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左脚を切断しながら高校時代は野球部、ハンディは「言っても仕方ない」 パラサイクリング川本翔大の生き様

川本はパリ五輪メダル獲得を目指す【写真:松橋晶子】
川本はパリ五輪メダル獲得を目指す【写真:松橋晶子】

パリパラリンピックへ「試合でしっかり自分の100%を出せるように」

「この競技をやっていなかったら、たぶん広島から出ることもなかったと思うんです。それが毎年のように大会で海外に行くようになって、ベルギーなんて毎年なんで“また帰ってきたな”みたいな感覚になるんですよね。

 それと僕は人見知りで、人と話すのがあんまり得意なほうではなかった。いろんな人と接する機会が増えて、どんどん話せるようになった。これも(自分の)変化かなと思います」

 社員として採用してくれた大和産業、応援してくれる周りの人々、スタッフ、競技仲間、家族、友人……パリパラリンピックのメダルを目標に掲げ、感謝の気持ちを日々のパワーに変換している。

「パラリンピックでメダルを獲るためには、試合でしっかり自分の100%を出せるように日ごろの練習で最初の1本目からいいタイムを出していく。そこをベースに(練習に)入っていくことを心掛けてやっています」

 本大会まであと1年足らず。

 母は遠距離のリオ、無観客の東京だったこともあり、一度もパラリンピック会場まで応援に来ていないのだという。実はパリの出場を決めても、広島から応援することを既に伝えられている。静かに見守ってくれるのが、母らしいとも感じている。

 バンクを颯爽と、風のように。

 川本はきょうもペダルを力強く踏み込んでいく――。

(二宮 寿朗 / Toshio Ninomiya)

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二宮 寿朗

1972年生まれ、愛媛県出身。日本大学法学部卒業後、スポーツニッポン新聞社に入社。2006年に退社後、「Number」編集部を経て独立した。サッカーをはじめ格闘技やボクシング、ラグビーなどを追い、インタビューでは取材対象者と信頼関係を築きながら内面に鋭く迫る。著書に『松田直樹を忘れない』(三栄書房)、『中村俊輔 サッカー覚書』(文藝春秋、共著)、『鉄人の思考法~1980年生まれ戦い続けるアスリート』(集英社)、『ベイスターズ再建録』(双葉社)などがある。

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