[THE ANSWER] スポーツ文化・育成&総合ニュースサイト

身長168cmの不利を覆せるか フェンシング19歳新鋭、飯村一輝が磨く「一瞬で距離ゼロ」の技術

パリ五輪出場は「最低限のライン」。飯村一輝は武器のスピードを生かすため日々駆け引きを磨いている【写真:積紫乃】
パリ五輪出場は「最低限のライン」。飯村一輝は武器のスピードを生かすため日々駆け引きを磨いている【写真:積紫乃】

「ギアを上げる瞬間」を分からないようにするための駆け引き

 飯村は、自身のスタイルを磨いてきた。いや、正確に言えば磨かなければならなかった。というのも飯村の身長が168センチである一方、男子フルーレの選手の平均身長は180センチを超えている。

【注目】育成とその先の未来へ 野球少年・少女、保護者や指導者が知りたい現場の今を発信、野球育成解決サイト「First Pitch」はこちら

「一番高い選手だと197センチくらいあるんですよ」

 飯村は笑って話すが、一般には身長が高い、つまり手足が長い選手が有利だ。だから身長をとってみれば、飯村は不利な状態で臨んでいると言える。

 それを覆すために自分のスタイルを磨いてきた。

「僕の一番の持ち味はスピードです。身長があって手足の長い選手に対して、どう距離感をごまかして相手の懐に踏み込むか、潜り込むかが肝になっています。スピードを生かすために、相手のタイミングやテンポをずらしたり」

 そして、こう語る。

「『一瞬で距離をゼロにする』というスピードを今磨いています。リーチの差、身長の差を埋めるためには“0-100”のスピードをいかに気づかれない間に、一気に加速させるかが大事になってきます」

 無論、活躍すれば相手も飯村のスタイルを研究してくる。飯村もその自覚はある。

「去年の世界ジュニア選手権で優勝して、その後のワールドカップで3位に入ってからスピードを上げる時に潰されてしまう。こっちが上げると向こうもそこを狙ってきてお互いに詰めてきて、クラッシュすることが多くなりました」

 だから、「ギアを上げる瞬間を分からないようにしながら、相手とのタイミングをずらして距離をゼロにする練習をしています」。

 同時に、フェンシングの魅力として感じる駆け引きがポイントになる。

「それは剣の駆け引きだけじゃなくて、距離の駆け引きにおいてもそうですし、どっちが前に出るかという前後の駆け引きもあるので、全部が複雑に絡み合っている中でいかにして相手の裏を取るかという読み合いにもなってきます」

1 2 3

松原 孝臣

1967年生まれ。早稲田大学を卒業後、出版社勤務を経てフリーライターに。その後スポーツ総合誌「Number」の編集に10年携わり、再びフリーとなってノンフィクションなど幅広い分野で執筆している。スポーツでは主に五輪競技を中心に追い、夏季は2004年アテネ大会以降、冬季は2002年ソルトレークシティ大会から現地で取材。著書に『高齢者は社会資源だ』(ハリウコミュニケーションズ)、『フライングガールズ―高梨沙羅と女子ジャンプの挑戦―』(文藝春秋)、『メダリストに学ぶ前人未到の結果を出す力』(クロスメディア・パブリッシング)などがある。

W-ANS ACADEMY
ポカリスエット ゼリー|ポカリスエット公式サイト|大塚製薬
DAZN
スマートコーチは、専門コーチとネットでつながり、動画の送りあいで上達を目指す新しい形のオンラインレッスンプラットフォーム
THE ANSWER的「国際女性ウィーク」
N-FADP
#青春のアザーカット
One Rugby関連記事へ
THE ANSWER 取材記者・WEBアシスタント募集