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身長168cmの不利を覆せるか フェンシング19歳新鋭、飯村一輝が磨く「一瞬で距離ゼロ」の技術

日本スポーツ界の将来を背負う逸材は幼少期からどんな環境や指導を受けて育ち、アスリートとしての成長曲線を描いてきたのか――。10代で国内トップレベルの実力を持ち、五輪など世界最高峰の舞台を見据える若き才能に迫ったインタビュー連載。今回は7月にイタリア・ミラノで行われたフェンシング世界選手権で、男子フルーレ団体の一員として史上初の金メダル獲得の快挙を達成した19歳の飯村一輝(慶應義塾大学)だ。中編では身長168センチと小柄な飯村が、世界と渡り合うために磨いている独自のフェンシングスタイルについて。身長やリーチの差を埋めるべく、持ち味であるスピードを生かすための方法論を日々模索する姿を追った。(取材・文=松原 孝臣)

日本代表として世界を転戦する飯村一輝。22年4月の世界ジュニア選手権男子フルーレで金メダルを獲得した【写真:日本フェンシング協会/Augusto Bizzi/FIE】
日本代表として世界を転戦する飯村一輝。22年4月の世界ジュニア選手権男子フルーレで金メダルを獲得した【写真:日本フェンシング協会/Augusto Bizzi/FIE】

連載「10代逸材のトリセツ」、飯村一輝(フェンシング)中編

 日本スポーツ界の将来を背負う逸材は幼少期からどんな環境や指導を受けて育ち、アスリートとしての成長曲線を描いてきたのか――。10代で国内トップレベルの実力を持ち、五輪など世界最高峰の舞台を見据える若き才能に迫ったインタビュー連載。今回は7月にイタリア・ミラノで行われたフェンシング世界選手権で、男子フルーレ団体の一員として史上初の金メダル獲得の快挙を達成した19歳の飯村一輝(慶應義塾大学)だ。中編では身長168センチと小柄な飯村が、世界と渡り合うために磨いている独自のフェンシングスタイルについて。身長やリーチの差を埋めるべく、持ち味であるスピードを生かすための方法論を日々模索する姿を追った。(取材・文=松原 孝臣)

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 フェンシングのこれからを担うと期待を集める飯村一輝。今や日本フルーレの主軸をなす1人となった飯村が、そのポテンシャルを示した大会の1つが、今年2月下旬にエジプト・カイロで行われたワールドカップだった。

 この大会で日本は12年ぶりの団体戦金メダルを獲得したが、日本がビハインドの場面で流れを変えたのが飯村だった。

 準決勝のポーランド戦、リードを許す展開の中で飯村は出場すると9-3と相手を圧倒する。飯村の活躍により日本は16-20から25-23と逆転に成功。そのリードを守って勝利を収めた。

 決勝のイタリア戦でも、日本は立ち上がりからリードを奪われる。ここで出場した飯村が対戦したのは、昨年の世界選手権銀メダリストであり世界ランキング1位のトンマゾ・マリニ。この強敵を相手に9-1と圧倒し、日本は逆転したのである。その後、日本とイタリアとで拮抗した勝負が続き日本が勝利を収めたが、飯村の功績がそこにつながっていた。

 6月下旬に行われたアジア選手権でも鮮やかな勝利を見せた。東京五輪金メダルのチャン・カロン(香港)を15-9で破り、ベスト8入りを果たしたのである。

「自分の中で前までは絶対勝てなかった世界ランカー上位の相手選手と張り合えるようになってきました。気持ちの持ちようでもあると思うんですけど、自分の持っているフェンシングスタイル、自分の持っている実力を出し切ることができれば通用するんだと実感を得ることができています」

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松原 孝臣

1967年生まれ。早稲田大学を卒業後、出版社勤務を経てフリーライターに。その後スポーツ総合誌「Number」の編集に10年携わり、再びフリーとなってノンフィクションなど幅広い分野で執筆している。スポーツでは主に五輪競技を中心に追い、夏季は2004年アテネ大会以降、冬季は2002年ソルトレークシティ大会から現地で取材。著書に『高齢者は社会資源だ』(ハリウコミュニケーションズ)、『フライングガールズ―高梨沙羅と女子ジャンプの挑戦―』(文藝春秋)、『メダリストに学ぶ前人未到の結果を出す力』(クロスメディア・パブリッシング)などがある。

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