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10代サッカー選手の欧州挑戦が増える背景 レアル中井卓大らが研鑽、日本にない“成長”の選択肢

エムバペもモナコのBチームでの活躍がブレイクのきっかけ

 昨シーズン、中井はカスティージャで苦戦を余儀なくされた。ユースから昇格したばかり、同じポジションにすでに有力選手がいたことで、ベンチが定位置に。システムやポジションの特性(5-4-1を採用し、トップ下やインサイドハーフで持ち味を発揮する中井の適性ポジションがない)もあって、1年を通じて数分間しか出場機会を与えられなかった。

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 中井はトップチームの練習にも帯同しながら、カスティージャでのプレーを目指し、雌伏の時を過ごしている状況だ。

 いずれにせよ、セカンドチームが下部カテゴリーに組み込まれていることで、若手は実戦経験を積める。この回路が欧州のサッカーを重厚なものにしている。パリ・サンジェルマンのフランス代表スーパースター、キリアン・エムバペも当初はモナコのBチームでプレー。ビッグクラブで活躍するヨーロッパの選手を見渡しても、下部組織で育ってセカンドチームで研鑽を積むケースは少なくない。

 南米からやってきた選手にも、一つの登竜門になっている(現在は18歳未満の国際移籍禁止処分の問題はあるが)。FCバルセロナの下部組織ラ・マシアでは、かつてリオネル・メッシがカテゴリーを駆け上がっていった。バルサBでプレーした試合数は少ないが、実力を示すことでトップに抜擢された。

「洗礼のようなタックルを浴びてこい」

 そう送り出されたが、試合後には相手の大人をコテンパンにしたという。

 最近では、ディフェンスの軸になったウルグアイ代表DFロナルド・アラウホが2シーズン、バルサBでプレーし、トップで活躍する実力を手に入れている。

 一方のレアルは、いずれもスペイン代表のダニエル・カルバハル、ナチョ、ルーカス・バスケスがカスティージャで成熟した。ブラジル代表MFカゼミーロ、ファビーニョ、ノルウェー代表MFマルティン・ウーデゴールなども、カスティージャを経て一流になった。進境著しいウルグアイ代表フェデリコ・バルベルデもカスティージャで欧州挑戦をスタートし、今の地位をつかみ取ったのだ。

 日本では3、4部だと「蹴るサッカー」になる傾向がある。目先の結果のためだろうが、これでは選手の成長は促せない。蹴り合いに人材が埋もれてしまうのだ。

 一方、プロリーグに在籍する欧州のセカンドチームは、勝利と同時に成長が求められ、「サッカー」に取り組んで勝負している。そもそも、スペインは観客が退屈なサッカーを好まず、プレッシャーもかかっていないのに蹴り込むことに拒否反応を示す。否応なく、サッカーをする環境でプレーヤーとして試されるのだ。

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小宮 良之

1972年生まれ。大学卒業後にスペインのバルセロナに渡り、スポーツライターに。トリノ五輪、ドイツW杯を現地取材後、2006年から日本に拠点を移す。アスリートと心を通わすインタビューに定評があり、『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など多くの著書がある。2018年に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家としてもデビュー。少年少女の熱い生き方を描き、重松清氏の賞賛を受けた。2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を上梓。

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