水野晃樹「名将に愛された男の20年」第5回、盛岡で3年ぶりに果たしたJリーグ帰還

　競争の激しいプロサッカーの世界で、20年以上にわたってキャリアを積み重ねられるのは限られた選手にのみ与えられる栄誉だ。今季からJ3のいわてグルージャ盛岡に所属する37歳の元日本代表MF水野晃樹も、2004年に高卒ルーキーとしてJリーグデビューを果たして以来、プロサッカー選手として20年目のシーズンを戦っている。だが、その道のりは決して平坦なものではなかった。名将からの寵愛を受けて飛躍するも、初の海外移籍で挫折を味わい、度重なる膝の怪我にも悩まされた。苦難を乗り越えながら駆け抜けた日々に、何を感じ、どんな答えを見つけてきたのか。最終回となる今回は、10チームを渡り歩いたプロキャリアでの原動力について明かした。（取材・文＝小宮 良之）

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　水野晃樹は今年、プロサッカー選手人生20年目のシーズンを送っている。ジェフユナイテッド千葉、セルティックに所属した後、柏レイソル、ヴァンフォーレ甲府、千葉、ベガルタ仙台、サガン鳥栖、ロアッソ熊本、SC相模原、はやぶさイレブン、そしてグルージャ。あらゆるカテゴリーの10チームを渡り歩いた。

　2021年にはやぶさイレブンで、一度は神奈川県2部リーグという地域リーグでプレーしながら、その後毎年昇格し（チームは現在、関東2部）、水野自身は今年J3のグルージャに移籍したことでJリーガーに復活している。

「若い選手も多いので、お手本になる立場ですかね」

　水野はそう言って、グルージャでの使命を明かした。

「ピッチでのプレーの表現もありますけど、それ以外にベテランがやらないといけないことはあって。ここには、海外や日本代表も経験している選手はいないので、例えば『J3で活躍できているからって、それで満足するなよ』ってことを伝えられたら。監督の（松原）良香さんにも、『経験者の意見は大事』って言ってもらえているので。自分もジェフで若手だった時は、坂本（將貴）隊長にお世話になったので、ベテランとしてそれができるようにしていきたいですね」

　20年に及ぶプロサッカー選手人生とは？

「いつも首の皮一枚でした」

　水野本人は繰り返し言うが、むしろ逆境を求めてきたような反骨も透けて見える。

「これはいつも言うんですが、結局、自分はサッカーが好き、ってところだとは思います。指導者も観客もいいですが、プレーヤーとしてサッカーボールを蹴るのが好きで。その場所があるならって、ずっとやってこられました。さすがに地域リーグに行く時は家族に相談しましたが、妻から『もしサッカーを続けられる場所があるなら、どこのカテゴリーでも。もうちょっとサッカーしている姿を見たい』って言ってもらえたので、甘えています」