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W杯決勝のPK戦4人目を蹴った舞台裏 12年経っても熊谷紗希に息づく「W杯を楽しまないと損」

欧州では女子サッカー人気が沸騰「日本も乗り遅れてはいけない」

 熊谷もチームの一員となって築き上げた功績は、以降の日本女子サッカーが超えられない大きな壁でもある。歴史的な快挙過ぎるがゆえに、並大抵の結果ではインパクトが足りないというジレンマも。

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 優勝したW杯直後から戦いの場を欧州に移したからこそ、日本国内と海外で女子サッカーを取り巻く熱の違いを肌で感じている。

「欧州では女子サッカーの人気が年々上がってきていて、今が一番すごい。ビッグクラブは女子チームを持つことが一つのステータスになっていますし、チャンピオンズリーグでは観客動員が2万人を超えます。ドイツ代表が昨年のEURO(UEFA欧州女子選手権)で準優勝して、自国リーグのブンデスリーガが盛り上がるのを肌で感じました。その成長スピードに日本も乗り遅れてはいけないと感じます」

 もう一つ。昨年11月から12月にかけて行われた男子のW杯で、日本代表はドイツやスペインといった強豪国を破り、世界中に衝撃を与えた。性別は違えども、同じ世界大会で日の丸が躍動する姿は、熊谷に大きな刺激をもたらした。

「W杯って本当にすごいなって。男子W杯と日本代表の活躍、その影響力を見て、あらためて感じました。サッカーをやっている人間にとって夢の場所で、誰もが立ちたい舞台。過去に3回経験させてもらっているけれど、何度でもそれを味わいたい。自分は当事者として優勝した盛り上がりと、結果を出せなくて女子サッカーへの興味や関心が薄れていった流れを知っています。また日本の女子サッカーが世界中から一目置かれるために、日本の女子サッカー選手たちが認められるために、結果を出さなければいけないんです」

 自然と言葉に熱がこもり、今度は先頭に立ってチームを引っ張る。まだ見ぬ景色ではなく、一度見たことのある景色をもう一度眺めるために。

「せっかくのW杯を楽しまなくてどうするの?」

 熊谷紗希は仲間にこう投げかけ、昨日までの自分たちを超えていく。

※DAZNでは「UEFA女子チャンピオンズリーグ」や「FA女子スーパーリーグ」など、国内外の女子サッカーを配信中。

■熊谷 紗希 / Saki Kumagai

 1990年10月17日生まれ、北海道出身。2009年に常盤木学園高から浦和レッズ・レディースに入団し、なでしこリーグに初出場。同年に筑波大にも進んだが、2011年に女子ブンデスリーガの1.FFCフランクフルトへ移籍。2013年にフランス女子1部のオリンピック・リヨンへ活躍の場を移したが、2021年にFCバイエルン・ミュンヘンと契約し、ブンデスリーガに復帰した。2008年に高校2年生で代表初選出されて以来、欠かせない存在となり、2011年FIFA女子W杯では20歳で優勝を経験。2017年から代表チームで主将を務める。W杯は2011年、2015年、2019年大会、五輪は2012年ロンドン大会、2021年東京大会に出場。

(藤井雅彦 / Masahiko Fujii)

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