パリ五輪と教師、柔道・老野祐平が追う2つの夢 大学での飛躍を支えた中学恩師の教え
一般社団法人大学スポーツ協会(UNIVAS)が、3月6日に都内で開催した年間表彰式「UNIVAS AWARDS 2022-23」。華やかな雰囲気のなかで大学スポーツの発展に貢献した学生アスリートや指導者、団体が表彰されたが、全13部門の最後に“主役”となったのが「マン・オブ・ザ・イヤー」最優秀賞に輝いた帝京平成大学・男子柔道部の老野祐平だった。「文武両道を実践し、他の模範となる運動部学生」として最高の栄誉を手にしたが、21歳の柔道家はこれまでどんなキャリアを歩み、日々トライを続けてきたのか。(取材・文=THE ANSWER編集部・谷沢 直也)
「UNIVAS AWARDS 2022-23」でマン・オブ・ザ・イヤー最優秀賞を受賞
一般社団法人大学スポーツ協会(UNIVAS)が、3月6日に都内で開催した年間表彰式「UNIVAS AWARDS 2022-23」。華やかな雰囲気のなかで大学スポーツの発展に貢献した学生アスリートや指導者、団体が表彰されたが、全13部門の最後に“主役”となったのが「マン・オブ・ザ・イヤー」最優秀賞に輝いた帝京平成大学・男子柔道部の老野祐平だった。「文武両道を実践し、他の模範となる運動部学生」として最高の栄誉を手にしたが、21歳の柔道家はこれまでどんなキャリアを歩み、日々トライを続けてきたのか。(取材・文=THE ANSWER編集部・谷沢 直也)
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「ずっと不安でしたね。強くなれるかなって。今も強くなったっていう実感はあまりないんです。これから強くなれるかなとか、今もすごい不安で」
大学スポーツの年間表彰式で、最高の栄誉に輝いた1人とは思えない謙虚な言葉だった。だが少し間を置いて続けた「でも不安があるからこそ、ずっと追い求められているのかなって思います」の一言に、若き柔道家・老野祐平の本質がある。
福岡県北九州市に生まれ、柔道に初めて触れたのは4歳の時。5歳上と6歳上の2人の兄が突然サッカーをやめて、近所の柔道場に通い始めたところについていった。「楽しそうだな」と思って始めると、小学生時代には早速才能を輝かせる。
「全国大会は出てなかったんですけど、西日本大会で2番になったり、九州を3連覇したり。比較的負けることのほうが少なくて、自分で言うのもあれなんですけど、小学校の時はもうすごく強くて」
中学は2人の兄も通っていた校区外の白銀中へ。柔道部の宮浦晋一監督の指導を受けるためだった。
「すごく厳しい先生で、いろいろなことを教わりました。今の自分の考えにもつながるんですけど、私生活と学校生活もしっかりしろ、柔道だけでは強くなれないんだぞというのをすごく教わったというか。人間性が大切だぞというのも、よく先生から言われましたね」
現在の「文武両道」につながるベースが築かれた中学時代。だが競技成績については、満足な結果を得られなかった。
「中学の時は地獄を見たというか、どん底を味わったというか……。九州大会も1回戦負けとか、小学校の時に勝っていた相手にも負けたりして。柔道をやめたいと思ったことはなかったんですけど、なんかもう言葉に表せないような、どうしてこうなるんだろうみたいな。受け止められてもいなかったですね、弱い自分を」