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多様性は「好き勝手にしていい」ではない スポーツ選手が持つべき相手へのリスペクト

プジョルはサンバを踊る味方を叱り、報復行為から守った

 ヴィニシウスへの人種差別的言動は、対処すべき問題だろう。しかし、本人がそれに怒るのはまだしも、ピッチで敵選手を煽って侮辱的言動を繰り返す限り、攻撃は止まない。彼自身も、暗黙の了解を破っていることになり、さらなる標的になる。ブラジル人である彼自身は「サンバは自由」と捉えても、スペインでは違うのだ。

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 敵地で必要以上にゴールを祝うことは、できるだけ慎むべきだろう。

 その昔、FCバルセロナの主将であるカルレス・プジョルが、自軍のブラジル人たちを諫めたことがあった。敵地でゴールをサンバで祝ったのを駆け寄って叱りつけ、自陣に戻した。プジョルは主将として味方を守ったのである。もしスタジアム全体の敵意が高まって選手に伝播した場合、報復行為もあり得るからだ。

「ヴィニシウスもファンも、もっと上手くやれるはず。自分たちはあくまでサッカーをプレーしている。上手く問題を両者の関係で解決し、サッカーそのものが話題になることを望みたい」(アスレティック・ビルバオFWラウール・ガルシア)

 ダイバーシティは心地良い言葉である。しかし繰り返すが、現場の価値観を尊重できなかったら、関係は拗れる。それぞれの正義で押し通そうとして問題になるのは、どんな社会でも同じである。

(小宮 良之 / Yoshiyuki Komiya)

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小宮 良之

1972年生まれ。大学卒業後にスペインのバルセロナに渡り、スポーツライターに。トリノ五輪、ドイツW杯を現地取材後、2006年から日本に拠点を移す。アスリートと心を通わすインタビューに定評があり、『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など多くの著書がある。2018年に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家としてもデビュー。少年少女の熱い生き方を描き、重松清氏の賞賛を受けた。2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を上梓。

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