プロ野球の投手の伸びしろは「恐ろしいものが…」 やり投げ選手が驚くフィジカル潜在能力
スポーツ界の発展にも大切な交流「お互いの脳の刺激になる」
異なる2つの競技を融合させるから生まれるものがある。
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前編に記した通り、この合同トレーニングの狙いは競技ごとで凝り固まった常識を壊し、新たな成長のヒントを探すことにある。一流同士、競技の垣根を越えて知見を共有し合うことは、日本のスポーツ界の発展という視点でも重要だ。しかし、競技が違えば、交流する機会は限られる。
ディーンは小6まで、小南は高1まで野球をしていたが、トップレベルのアスリートとなっても野球選手とは接点が皆無だった。「(一般人と同じ感覚で)野球選手って凄いなあって、思っていました(笑)。道端を歩いていて奇跡的に会うしかないくらい遠い存在」とディーンは笑う。
「どうしても、自分たちの競技の練習しかしなくなる。ここに来ると、野球ボールを投げてみて、やっぱりシンプルに速く(腕を)振れることが大事と改めて思える。ハンドボール出身が前回の世界陸上トップ8に2人いたんです。自分がやっていないスポーツを生で見たり、感じたりすることは刺激になるし、(発見の)材料になる。お互いに文章や動画で『こんなことしてます』と発信するのではなく、実際に会ってやることによってお互いの脳の刺激になります」(ディーン)
2021年から始まった合同トレーニング。ディーンと小南にしても、参加者たちの成長を感じられることも楽しみという。
「巨人の高梨(雄平)君は去年参加した時に『腹筋が使い物にならなくなった』と言って倒れていました(笑)でも1年を通して体が丈夫になり、(フィジカルの)ベースが上がった。それだけ継続してくれる魅力が、僕らが伝えたトレーニングにあったのかなと思います。野球もやり投げもトップレベルになれば負荷も上がってくる。一番は怪我しないこと。怪我しない体を作って、日本球界のトップで活躍してくれると、ファン目線で嬉しいです」(ディーン)
「いろんなトレーニング種目をやった中で、自分の中で『これが必要だ』と思ってもられるものがあったとしたら嬉しいこと。それを自分のトレーニングに発展させて、ちょっとでもモチベーションが上がったり、ちょっとでも1軍で長く投げたりにつながれば。今年はスケジュールで参加できなかった選手もいますが、やっぱり一回会うと気になるし、試合も見に行きたくなる。そういう選手が1軍にいたりすると嬉しくなりますね」(小南)
参加者にエールを送りながら、2人は自身の来たるべき2023年シーズンに闘志を燃やす。
ディーンは2012年ロンドン五輪で10位。2021年東京五輪を逃したが、22年世界陸上で9位。一方、小南は東京五輪に出場するも全体19番手で予選落ちを味わった。今年は世界陸上(ブダペスト)が控え、ともに来年に迫った24年パリ五輪出場を目指している。
「まずはブダペストにしっかりと出るということ。日本のやり投げ界では、ほぼ最年長の年齢になっているので、引っ張って行っていきたい。世界のレベルも上がっているので、それに食らいつきながらトップ8を目指して。そして、パリ五輪には必ず出られるように。それが一番の目標です」(ディーン)
「ディーンさんはロンドンに出て、世界陸上も出て、両方入賞まであと一歩のところで悔しい想いをしている。僕は東京で五輪に出たけど、悔しいどころか、ただ出ただけ。情けない想いだったので、パリ五輪に行くのはもちろん、日本人として世界と戦っていけるように。ここに来てくださるプロ野球選手の方も、僕らの肩書きもあって話に筋が通る。世界陸上や五輪のレベルにいなかったら、僕らの言うことが説得力に欠けてしまいますから」(小南)
(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)