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250枚のFAXでカメルーンとの試合が実現 1人の高校生を決意させた日韓W杯の経験

公開練習試合の様子を伝えた当時の新聞記事【写真:宇都宮徹壱】
公開練習試合の様子を伝えた当時の新聞記事【写真:宇都宮徹壱】

開催に向けて中津江村と県協会で250枚のFAXをやりとり

 この公開練習試合、当初は5月20日に開催される予定であった。しかし、カメルーンの到着が大幅に遅れたため、止むなく延期。この試合に関しては、葉書による抽選会も行われており、さらには高体連の関係者や高校生たちを待機させていたため、一方的に中止にするわけにはいかなかった。中津江村キャンプ推進室と県のサッカー協会との間では、5月2日から26日にかけて実に250枚ものFAXがやりとりされたという。

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 こうした関係者の努力によって実現した、カメルーン代表と地元の高校生との公開練習試合。およそ真剣勝負とは言い難い内容だったが、それでも試合に出場していた高校生の中には、その後の人生のターニングポイントとなった人物もいる。今回はW杯とカメルーン代表が大分に残した、意外なレガシーの顛末を紹介することにしたい。

「カメルーンの到着が遅れてしまって、本当にできるかどうかが確定しないまま1週間くらいが過ぎました。(27日)当日の朝になって急きょ開催が決まって、それで授業を途中で切り上げて監督の車で出発することになりました。ずっと下道だったので、3時間くらいかかりました。到着したら、もうヘロヘロでしたよ(苦笑)」

 そう語るのは、JFLのヴェルスパ大分でGMを務める生口明宏、38歳である。20年前、生口は大分鶴崎高校の3年生。県の高校選抜の一員として、カメルーンとの公開練習試合に出場している。チームメイトには、のちにJリーガーとなる内村圭宏(大分、愛媛、札幌、今治)や神崎大輔(甲府、長崎、北九州)もいた。

 大変だったのは、彼らを引率する大人たちも同様。大分東明高校サッカー部の指導者、西村誠はこう回想する。

「中津江村に到着したら、チーム関係者から『高校生相手に試合はできない』って言われて愕然としましたね。通訳の方を介して交渉した結果、『短い時間だったらいい』ということになって。今から考えたら、よくできたなって感じです(苦笑)。大分県選抜と日田市選抜の2チームで、それぞれ30分ずつ。(サミュエル・)エトーや(パトリック・)エムボマを間近で見て、子供たちは『すげえ、すげえ』と大喜びでしたね」

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宇都宮 徹壱

1966年生まれ。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」を追う取材活動を展開する。W杯取材は98年フランス大会から継続中。2009年度ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞した『フットボールの犬 欧羅巴1999-2009』(東邦出版)のほか、『サッカーおくのほそ道 Jリーグを目指すクラブ 目指さないクラブ』(カンゼン)、『蹴日本紀行 47都道府県フットボールのある風景』(エクスナレッジ)など著書多数。17年から『宇都宮徹壱WM(ウェブマガジン)』を配信している。

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