日本初上陸の世界最高峰「X Games」で復活 BMXフラットランドで紡がれたストーリー
銅メダル・佐々木元の切れかかった気持ちを繋いだ応援の声
歓喜の涙を浮かべる早川の隣で、うれしさ、悔しさ、安堵など複雑な想いが入り混じった涙を流した人がいる。それが銅メダルを獲得した佐々木元だ。
【注目】育成とその先の未来へ 野球少年・少女、保護者や指導者が知りたい現場の今を発信、野球育成解決サイト「First Pitch」はこちら
開催地・千葉に拠点を置く36歳も、補欠から正式出場が決まった1人。X Games日本初開催とBMXフラットランド復活を知ってから4か月あまり、家族と過ごす時間を削って練習を重ね、車体を支える親指と人差し指の間には硬いタコができている。競技を始めて20年。出場が叶う日が来るとは思わなかった夢の舞台でのパフォーマンスに全力を注いだ。
フロントホイールを使いながら車体をスピンさせるスピーディでキレのあるトリックが持ち味。この日はビッキー・ゴメス(スペイン)と対戦した1回戦から面白いようにトリックが決まった。ジュメリンと対戦した2回戦では、この日のために準備してきた新技を開始早々に成功。ステージ脇に集まった応援団に向けてガッツポーズを見せた。
「絶対に勝つと思いました」。だが、ジャッジの判定はジュメリンの勝利。ステージ上でも納得のいかない様子を見せ、「なんで勝てなかったのか悔しくて、正直、もう投げ出して帰ろうと思ったくらい」と振り返る。佐々木のパフォーマンスをステージ下から見守った世界王者11度の内野洋平も、驚いた表情で首をひねるばかり。だが、切れかけた気持ちを繋ぎ止めてくれたのは、こうした仲間から受けた共感、そして応援の声だった。
「本当に納得いかなかったんですけど、みんなが同じように悔しがってくれたし、絶対お前の方が勝っていたと言ってくれた。ステージの周りではこれまで支えてくれた大勢の人たちが応援してくれていたし、スタンドからは3歳と1歳の息子たちも見てくれていた。今までの自分だったら自暴自棄になっていた。みんなのサポートがあったから気持ちを切り替えられました」
ダンドワと臨んだ3位決定戦では、そんな気持ちの葛藤があったことは微塵も感じさせないパフォーマンスを披露。地元開催という「ハンパじゃないプレッシャー」を跳ね返し、最後は勝って銅メダルを手にすると、胸の奥に閉じ込めておいた複雑な感情を洗い流すかのように泣いた。
誰も決めたことがない超高難易度のバイクフリップだけに全神経を集中させ、最後のトライで9割方成功しながら完璧な着地を逃して1回戦で姿を消した内野。6度目のX Games出場で初めて銀メダルを獲得し、「日本の強さが光る中でヨーロッパ勢にとって大きな意味のあるメダルになった」と誇らしげに語った大ベテランのジュメリン。19年ぶりにX Gamesで復活を遂げたBMXフラットランドのステージでは、それぞれの選手によるそれぞれのストーリーが紡がれた。
(THE ANSWER編集部・佐藤 直子 / Naoko Sato)