高梨沙羅らの魅力を伝えた小冊子「美翔女」 元選手の編集長が語る10年間と休刊の理由
訪れた発行終了の日、明かした“新たな夢
そんな『美翔女』は、2018年8月に最終号を迎えた。ソチ、平昌と2回の五輪を挟み、競技の認知度が大きく向上していた。平昌では高梨が初のメダルも獲得し、「女子スキージャンプをメジャーに」という目標が達成されたのが理由だ。
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「五輪の正式種目を目指しなんとか盛り上げていきたいっていう思いで始めたことなので、そういった部分で『美翔女』の冊子としての役目は果たしたかなっていう思いがありました。普通の雑誌とかであれば、『盛り上がっていくのはここからでしょ』となっていたかと思いますが、私の思いはあくまでも『女子スキージャンプを1人でも多くの人に知ってもらいたい』だったので、十分果たしたなという気持ちです。一度区切りをつけて、また新たなチャレンジをしたいという気持ちもあったので、いったんやめようと」
休刊が決まり、選手の反応はどうだったのか。
「残念がっていましたね。(美翔女に)出ていない子たちは出たかったという声も聞きました」
ちなみに北京五輪代表の4選手は全員、掲載経験がある。
あれから3年半。「今は冊子を作るつもりはないですね」と話す山田さんだが、新たなプロジェクトが進行中であることを明かしてくれた。
「今、女子スキージャンプの短編映画を製作中です。熱い気持ちに賛同してくれる仲間が増え、自主映画を製作中です(笑)」
10年続けた『美翔女』でのさまざまな経験を生かし、女子ジャンプをテーマに、今度は映画を通じて魅力を伝えていくという。
「(美翔女は)少なからず女子ジャンプのためにとやってきたことなんですが、私も楽しませてもらったし、いろいろな経験もさせてもらいました。大橋さんは大橋さんでカメラマンとして無理やり巻き込んでのスタートでしたが、女子ジャンプに携わることができて良かったという思いも持ってくれていたので、逆に恩返しみたいな形のものを何かできないかなって、考えた結果です」
そういえば、最終号には「終わりはきっと始まりのサイン」と書かれていた。順調に知名度を上げている女子ジャンプも、「今後はトップ選手だけじゃなくてその下の選手も競技を続けられるような環境が、もっともっと増えていったらいいなと思います」と山田さんは希望する。華やかなように見えても、競技として成熟するのはこれから。「学生を終えてからの所属チームが少ない」という課題にも直面している。所属できるチームが少なければ、学生から社会人になる時に競技を続けることが困難になる。若い選手が育たなくなってしまう。それでは、競技の底上げにはつながらないと、山田さんは考えている。
女子ジャンプの普及にひと役を買った『美翔女』。その歴史にピリオドは打たれたが、山田さんの女子ジャンプに対する情熱は、次のステージにも受け継がれる。
(水沼 一夫 / Kazuo Mizunuma)
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