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「私が高梨沙羅に惹かれた理由」 12歳から追い続けた写真家が知る、儚さゆえの美しさ

“人間臭い”高梨の姿が観覧者の心を動かす

 2度の五輪、世界選手権、W杯……カメラは海の向こうの高梨も捉えた。年齢を重ねると、今度は別の魅力に引き込まれた。高梨はより一層と自分らしさを身につけ、個性を確立する。

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「今、さらに洗練されている時期に入ってきているんじゃないですかね。ゆったりした日常の感じから、大会中のストイックな雰囲気に変わるわけじゃないですか。そんな魅力的な人、いないですよね」と大橋さんは言った。

 撮影をする上で、大切にしているのは本人との距離感だ。長い付き合いになっても、近すぎず、離れすぎずの距離を保っている。

「今じゃないなっていう時は、あまりカメラを向け過ぎないようにしている自分はいるんです」

 キャリア20年を超えるベテランの大橋さん。それでも高梨を撮影する時は、意識していることがあるという。

「大切にしているのは、高梨選手でしか表現できない写真を撮影しようということ。彼女は自分のジャンプを、次の五輪でもW杯でも、いつも実現しようと思っている。なので私も、本当に彼女でしか伝えられない写真を撮りたいなと心掛けていますね」

 得意とする画角に落とし込むことはせず、ファインダーの先の一挙一動を追いかけている。

 大橋さんが撮影する高梨の表情は自然体の魅力を放っており、それは写真を見た人にも伝わっている。2018年に東京・六本木ヒルズで開催した「セブンカフェpresents 高梨沙羅写真展カフェ『SARA’S PROGRESS』」。大橋さんの9年間の一つの集大成だった。そこで出会った観覧者の1人が、声をかけてきた。

「私が思っていた高梨選手と違いました」

 思うような成績が取れず、号泣していた写真もあった。メディアを通じてあまり報道されることのない、高梨の素の姿が心を打った。

「(高梨には)もっといろんなことをクールにしているような印象がその方にはあったようなんですけど、人間臭い部分を感じられて、教員を目指している方だったんですが、写真から力をもらって『私も故郷に戻ったら教員の試験を受けてみようと思います』と言ってくれた。写真家冥利ですよね」

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大橋泰之

写真家 
1978年9月1日、北海道・小樽市出身。広告写真を始め、ドキュメンタリー、エディトリアル、最近では自主制作映画など幅広い分野の撮影を手掛ける。2018年3月、東京・六本木ヒルズで「セブンカフェpresents 高梨沙羅写真展カフェ『SARA'S PROGRESS』」を開催。合同会社マカロニ写真事務所代表。
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