「お互いの“苦手”を埋め合う」 東京パラ銀メダリストが考える“多様性”実現のカギ
車いすに乗って分かった難しさ、相手の立場になって分かった感覚
大学3年生の時、初めて日本障がい者バドミントン選手権に出場した鈴木さんは「こういう世界もあるんだ。車いすだったり足に障がいがあっても俊敏に動けるなんてすごい!」と驚きでいっぱいだったという。
パラバドミントン日本代表の合宿に参加した時は、実際に車いすに乗ってバドミントンを体験した。「もう全然。本当に難しいです」と目を丸くしながら振り返る。
「私の感覚ですと、打ったら自分の足を動かすというイメージが頭に焼き付いているんです。だから、打った後にタイヤを手で漕ぐことが難しくて難しくて。他の選手も体験して『いや~難しい~!』って驚いていました」
実際に体験し、その難しさを知ると、車いす選手へのリスペクトは何倍にも膨らむ。さらに、練習で車いす選手の相手をする時には「この動きはやりにくそうだったから、ここへ打ってみよう」「きっとここが狙われるだろう」と想像が膨らむ。相手の立場となり思いやることで、練習の質もまたアップする。
「ダイバーシティ」や「インクルージョン」という慣れない言葉を聞くと、なんだか難しそうなことに思えるが、日常の中の一コマで誰かや何かを思いやることは、ほんの少し意識を変えるだけで実践できる。
「体に障がいがある人に対して手助けの声を掛けやすいかもしれませんが、健常の方が悩んでいたり困っていたりする姿を見れば、障がいがある人が『どうしたの?』と声を掛けることもできます。お互い思いやることで、周りはいい雰囲気になってくる。健常・障がい関係なく、思いやりを持てば、自然とダイバーシティに繋がってくるのではないでしょうか」
誰もが生きやすくなる社会へのカギは、私たち一人一人の手に握られている。
(THE ANSWER編集部・佐藤 直子 / Naoko Sato)