米国は「物語性のあるスター」をなぜ欠いた 舌鋒鋭い米紙記者が指摘した五輪報道の教訓
「ストーリー性のあるスター」がいなかった2つの背景
なぜ、ストーリー性のあるスターがいなかったのか。それはメディアのネット化が進み、ニュースや情報の賞味期限がどんどん短くなる中で、4年に一度の周期でしか大きな注目を浴びない五輪競技がその波に乗りきれなかったことにあると思います。次から次へと情報が更新される時代に、どうやったら世間の注目を集めることができるのか。各競技団体はそれぞれ対策を考えなければならないでしょう。
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もう一つはSNSやネット配信サービスの普及によるテレビ離れです。アメリカでは、NetflixやAmazon Prime、HuluといったCMなしで楽しめるネット配信サービスが普及。そのため、テレビを見る人が減っています。そこでNBCも今回はストリーミング配信にも力を入れ、そこでは一定の効果が見られたようです。ただ、テレビでの視聴者数が伸び悩み、大きな打撃となりました。
NBCは今回の東京を含む2032年までの10大会の放映権料として総額120億ドル超を支払う契約を結んでいます。日本円にすると総額1兆3000億円を超えるわけですが、来年北京で行われる冬季オリンピック、2024年のパリオリンピックでどう立て直してくるのか。東京で学んだことは多かったのではないでしょうか。
東京から学ぶといえば、来年の北京大会、2024年のパリ大会の関係者たちもいろいろと考えさせられた大会になったはずです。来年の北京大会は新型コロナウイルス感染症の状況によっては無観客開催の可能性はないとは言えません。4年後のパリも同じです。最悪のシナリオを想定して準備を進める必要があるでしょう。
開催国・日本の皆さんですら現地観戦できなかった今回のオリンピックは、結果として“テレビ中継のための大会”になってしまいました。選手たちは全力を尽くしたとは思いますが、心からやり甲斐を感じることができたのか。再び無観客で開催されることになるのであれば、オリンピックの在り方を改めて考える必要はありそうです。未来に向けていろいろな問題提起をしたという点が、東京オリンピックのレガシーになり得るのかもしれません。