孤高の34歳・羽根田卓也の涙 リオ五輪前、履歴書が送られてきた伊藤華英が贈る言葉
自分の人生を自分で組み立てていくキャリアに持つ尊敬
最もリスペクトを感じるのは、自分の人生を自分で組み立てていくキャリアです。
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トップアスリートは孤独との戦い。ただ、多くの競技は仲間やチームメート、家族が身近にいる環境があるから頑張り、安心できることがあります。しかし、彼の場合はスロバキアに渡り、コーチとの二人三脚を貫いてきました。
スロバキアで大学院を出ていますが、日本での将来について相談されたことがあります。初めて私に連絡をくれた時もそうですが、金メダルを目指すアスリートが現役中にいろんな人に自ら会い、自分のキャリアをどうすべきかなんて話せません。
本来はプライドが邪魔するもの。誰かを頼れなかったり、そもそも誰に聞いていいか分からなかったり。日本のアスリート全般に言える課題ですが、羽根田選手はイチから環境を整えることに取り組んできた影響か、そういう思考を持っています。
環境問題について発信した記事を見たこともあります。「カヌーは自然と向き合う競技だから」と。今、必要性が叫ばれているSDGsなどの領域も発信できる。自ら考え、自ら行動する彼のような選手がスポーツ界に必要だと、強く思います。
羽根田選手が、これからの競技生活をどうしていくのかは分かりません。しかし、きっとどんな形でもカヌーを想い続けて生きていくと思います。だからこそ、この競技を背負ってきた経験を生かし、国際的な架け橋になってほしい。
スロバキア語の方が得意だそうですが、英語も話せる。アスリートは自分ができることを隠しがちですが、文武両道で積み重ねてきた努力は今後カヌーをやっていく人たちにも影響する。だからこそ、日本にとどまらない存在になってくれたら。
最後に、羽根田選手にカヌーの魅力を聞いてみると、こんな言葉が返ってきました。
「水の流れや呼吸を感じて、掴んで、そしてそれをカヌーの推進力へと変えるのがこの競技の極意。競技自体は荒々しくもありますが、0.1秒のタイムを争うスリリングな展開や、パドルを使って流れを操る技術力にも注目していただくと、楽しんで観戦していただけるのではないかと思います」
もっともっとカヌーの魅力が広まってほしいと思います。羽根田選手、本当にお疲れさまでした。今はまず、その言葉をかけたいです。
(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)