五輪3連覇の金メダリストが語る競技選択の裏側「だから自分で決断を下せた」
原点にあった祖父の指導方針
そんな野村さんだが、様々なスポーツに触れた上で中学からは競技としての柔道に取り組むことを自ら決意した。なぜ多くの選択肢の中から柔道を選んだのか。
「子供なりに『自分が何に一番向いているか?』と考えながら、タイムスポーツの水泳やチームスポーツの野球、サッカーもやっていました。その中で柔道が一番自分の中で真剣に取り組めると考えたんです。だから、中学校からは柔道一本に絞って、楽しいだけでなく強くなるために頑張ろう、そう自分から決断を下せたのだと思います。
そして私にとって何より良かったことは、祖父が『まずは礼儀作法を学びつつ、柔道を楽しんでほしい』という指導方針をもっていたということです。柔道を好きになってくれれば、目標を持って自然と努力し続けてくれるはず、という“柔道愛”に満ちた考えからだったんです。なので、小学生の頃は厳しい練習を強要されることはなかったですね」
自ら率先して練習に励むような環境が整えば、自然と目標に向かい上達する――。それには子供たちが“楽しんで”打ち込める何かを見つけることも重要な要素となることが、野村さんの話から分かる。
厳しい競争に打ち勝っていくには早い時期から一つの競技に絞り、専門的なトレーニングや知識を詰め込んでいくことも必要なのかもしれないが、野村さんの経験談を踏まえると、子どもたちが夢中になれそうなことを考え、選択肢を増やしてあげることも大切なのかもしれない。
【了】
茂野聡士●文 text by Satoshi Shigeno