育成年代で目指す「リーグ戦文化」定着 日本バスケットボール協会が見せる本気度の高さ
日本では小中高の育成年代で開催されるスポーツ大会と言えば、その大半がトーナメント戦方式を採用している。都道府県代表が集う全国大会はもちろん、代表を決める地域の大会も「負けたら終わり」の一発勝負が主流だ。そんな中、協会が陣頭指揮を執って育成年代に「リーグ戦文化」を根付かせようとする競技がある。それがバスケットボールだ。
なぜトーナメント戦文化からの脱却を図ろうとするのか
日本では小中高の育成年代で開催されるスポーツ大会と言えば、その大半がトーナメント戦方式を採用している。都道府県代表が集う全国大会はもちろん、代表を決める地域の大会も「負けたら終わり」の一発勝負が主流だ。そんな中、協会が陣頭指揮を執って育成年代に「リーグ戦文化」を根付かせようとする競技がある。それがバスケットボールだ。
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日本バスケットボール協会(JBA)は2018年に「U12/U15/U18 リーグ戦実施ガイドライン」を制定。47都道府県の各協会にU12/U15/U18のカテゴリー別にリーグ戦を設置し、育成年代へのリーグ戦文化の醸成を目指している。
なぜ「トーナメント戦文化」から脱却し、「リーグ戦文化」へ移行しようとするのか。その目的と背景について、JBA技術委員会でユース育成部門を担当する岩崎賢太郎氏に聞いた。
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きっかけは、2014年にJBAが国際バスケットボール連盟(FIBA)から受けた制裁だった。「国内男子トップリーグの統合」「協会組織のガバナンス改革」「日本代表の長期的な強化」の三課題について問題解決と改善が早急に必要であるという理由から、FIBAはJBAを資格停止処分とし、Jリーグ初代チェアマンの川淵三郎氏を課題解決のためのタスクフォースチームの共同議長に据えて組織改革を一任。その改革の一環としてJBA内に新設された専門委員会が「技術委員会」だった。
技術委員会は、男女代表チームの強化はもちろん、ユース育成、指導者養成、スポーツパフォーマンスなどの専門チームから組織され、日本バスケットボール界全体のレベルアップを図る役割を果たす。2016年から技術委員長として陣頭指揮を執るのが、元日本代表チームのコーチとしての実績も持つ東野智弥氏だ。「技術委員長は、代表を強くするには育成から変えていかなければいけない、という考えの持ち主。日常を世界基準にというキーワードから世界の育成環境にスタンダードを合わせていくことを考えた時に達した結論が、リーグ戦文化の導入でした」と岩崎氏は話す。
技術委員会副委員長を務める山本明ユース育成部会長がリードするワーキンググループを中心に議論を深め、トーナメント文化だけで考えられてきた「選手のピーク」について再考。日本代表に選ばれる年代で才能を大きく開花させるためには、小中高校生ではより多くの実戦を経験し、勝利・敗戦の両方から学ぶ機会を提供し、育てることに重点を置くことにした。
バスケットボールに限らず、負けたら終わりのトーナメント戦方式では「勝つことが全て」の勝利至上主義に陥りやすくなる。敗者にセカンドチャンスは与えられず、失敗からの学びを生かす機会はない。また、勝つために出場メンバーが限定されやすく、勝ち進んだ場合は過密スケジュールで出場選手への負担が増し、故障を引き起こしやすくなる。何よりもトーナメント戦方式では組み合わせに左右される部分が大きく、特に1回戦は実力差のあるチームの対戦が増えてしまう。
短期間で順位を決定したり、負けたら終わりというプレッシャーの中で力を発揮する強さを身につけたりなど、トーナメント戦方式が持つ利点もあるが、将来を見据えた選手の育成という目的を果たす上で相応しい形かと問われれば、疑問符が浮かんでしまうだろう。