闘莉王が「8月の最も熱いプレー」に中村憲剛復活弾を選出「日本の若い選手は勉強して」
大怪我から10か月ぶりの復活、出場8分で決めた絶妙なループシュート「優しいタッチ」
「憲剛選手はタッチも繊細で、才能溢れている。感覚の部分で、本当にものすごい細かさを必要とするタイプのプレーヤーだと思う。あの年齢で大怪我を乗り越えた復帰戦でフィーリングがどれだけ戻るのか。そういう部分も自分でも分からない状況だったと思う。そんな初戦で、あんなゴールを決めてくる。リスペクトしなければいけない。自分だったらできないと思いますね。シュートも止まっているボールでもなく、利き足でもない。でも、きれいに、ソフトに、あのコースに決めてくるのは凄い。何よりも相手GKのがっかり度がたまらないゴールだったと思う。打たれた瞬間にお手上げという顔をしていた。絶望するしかない。やっぱり、優しいタッチだな、と」
中村とは、実はJ2時代からしのぎを削ってきたという。闘莉王氏が水戸に期限付き移籍で在籍していた03年に中村は川崎でプロ1年目を迎えた。当時はお互いJ2がステージだった。その後、05年に川崎が昇格を果たすと、浦和の主力だった闘莉王氏と再び同じ舞台で対戦することとなる。
「憲剛は俺がJ2で水戸にいた時から対戦していますし、あの時から川崎を支えている、今の若いJリーガーには分かるのかな……というぐらい昔の話ですけど(笑)」
日本代表でも共闘し、揃って10年南アフリカW杯に出場した。Jの舞台ではライバル、代表ではチームメートとしてその姿を見てきた。繊細で精度の高いプレーだけではなく、川崎一筋で周囲を愛で巻き込む中村の良さを闘莉王氏らしい言葉で語った。
「前めのポジションもできるし、ボランチでもいい。すごくシュートも上手いし、FKも蹴れる。短距離も長距離もいずれもパスの精度が高くて、継続してハイレベルなプレーを見せている。それに憲剛選手は気合いがいつも顔に出てくるところが好きですね。前十字靭帯断裂からの復帰はどの選手にとっても難しいところ。プレーに影響が出る箇所でもあるので、自分はこの年で同じ怪我をしていたら、正直、復帰は考えられないですね。だからこそ、すごいサッカー選手だなと思います。復帰してすぐに意地悪な左足でループ決めてね(笑)。一段上のところでサッカーをしている人だなと思います。困難を乗り越えた憲剛選手の強さ、凄さ、メンタルの凄さがああいうところで出てきた。頑張ってきたからこそ神様が綺麗なゴールというご褒美をくれたんだと思う」
ただの復活ゴールではない。苦しみが、悔しさが、未来が、希望が込められたループ弾。数々のドラマが生まれた8月のJリーグで最も熱くなった瞬間として、闘莉王氏は高く評価していた。
■田中マルクス闘莉王
1981年4月24日生まれ、ブラジル出身。渋谷教育学園幕張高を卒業後、2001年にJ1広島でプロデビュー。06年に浦和のリーグ初優勝に貢献し、同年のJリーグMVPに輝く。07年にACL優勝、名古屋移籍後の10年に自身2度目のJ1制覇。03年の日本国籍取得後は日本代表としても活躍し、04年アテネ五輪、10年南アフリカW杯に出場。日本代表43試合8得点の成績を残した。19年12月にJ2京都で現役引退。現在はブラジルで実業家として活動する傍ら、公式YouTubeチャンネル「闘莉王TV」も話題に。
(小杉 舞 / Mai Kosugi)